そんなことに気づかせてくれるのが、となりのヤングジャンプで連載が始まった「はじマン チャレンジ! はじめてのマンガ」。作者は「ヒカルの碁」や「ユート」の原作者でもあるほったゆみです。コミックスのおまけページの自画像そのままに、本人がしゃべるエッセイ風マンガとなっています。
発端は、みんなカラオケでは楽しそうに歌っているのに、なぜマンガは描かないんだろう? という疑問から。歌は学校で習ったり、身近にあるから誰でも楽しめる。マンガも世の中に氾濫していて、すごくたくさん読まれているから身近にある。でも、マンガを描いている人は少ないのはなぜだろう、と。
確かにこれはもっともな疑問です。言われてみて、僕もそういわれてみれば何故なんだろうと思いました。でもやっぱり、マンガを描くには絵心が必要だったり、物語を考える必要があると思うし、個人的にはこの絵心のハードルがとっても高いのです。でも、こう言われてしまいます。
「お話を考えようって言ってるんじゃないの! コマを割ろうって言ってるの! コマを割るのは楽しいよー!」
ここでちょっとコマ割りについて解説を。
お話も考えず、知っているお話でも日記でも妄想でも、起承転結を気にせずとにかく描きたいシーンをコマ割りで描いてみよう。それはとても楽しいよ! というわけです。
「昔、国語の教科書に載っていたお話をコマに割ってみたら楽しかったもん。キャラがドラマチックに動いたりしゃべったりしたんだよ」
というわけで、実際にマンガを描いたことが無い人がコマを割るとどうなるか。実際に試しています。脚本として用意されたのは「ウサギとカメ」のワンシーンを元にした『くまくんときつねくん』です。台詞のト書きだけで構成されたものを、コマ割りで描いてもらっているのですね。挑戦しているのは55歳のおばさん、中学3年生の女の子、26歳女性、28歳男性、そして作者であるほったゆみ。
これがどれもこれも実に面白い! マンガを描いた経験があるのは26歳女性(と、ほったゆみ)だけなのですが、みんなそれぞれきちんとマンガになっています。
もちろんマンガ経験が無い人の描いたものは、絵もキャラクターの識別ができるだけで、落書きのようなものもあったりします。でも、表情や仕草が何となくわかったりするし、何より全てのキャラクターが生き生きとしている。単行本のおまけページで、ネーム(マンガを描く前の下書き)が公開されている作品があるのですが、そのネームを読んでいるような気持ちにもなりました。脚本だけではなく、コマ割りによって、マンガはマンガとなっていたのですね。
というわけで、「コマ割り」に注目をしているこれまでにない「マンガHOW TOマンガ」である「はじマン」。第一話では最後に新しいお話を提示していて、これをもとにコマ割りしてみませんか? という読者参加型のマンガにもなっています。はやくもpixivでは「はじマン」タグでコマ割りに挑戦した作品がアップされていたりもしています。中にはプロの犯行(?)も。是非読んで、コマ割りに挑戦してみましょう! Webページでは縦読みと横読みとが用意されているので、スマートフォンや画面の小さいノートパソコンなどでは縦読みがオススメです。
(杉村 啓)