かのリリー・フランキー氏は「みんなスカスカの人生なのに 幸せそうなフリしてるだけだよ」とおっしゃっていたが、そうは言っても、街ゆく人がみんな楽しそうな人生を送っているように見えてしまう。
マツバラさんは現在、Webサイト『モッケイエンタテイメント』で記事を書いている。
――記事を書くことになったきっかけは?
「二年の春に『モッケイエンタテイメント』の編集長である中川さんに声をかけられたんです。中川さんとは一年の時に語学のクラスで一緒で、なぜか私のことを覚えていたらしく、『なんで覚えてたの?』って訊いたら『ひとりで隅っこにいて、さみしそうだったから』って…」
――なんだか切ない理由…。大学生といえばサークルで友達を作る人は多いですが、サークルには入らなかったんですか?
「新歓の時期にはサークルを探したんですけど、いろんなビラをもらって、それを見た程度でした。実際に何度か新歓には行ったんですけど、騒がしいのについていけなくて」
――そもそも、なぜ『ひとりぼっち率』を調べようと?
「もともと、人の多い場所でひとりぼっちの人を数えようというのは、私のアイデアではなくて、編集長の指示だったんです。どうせ、ひとりぼっちを調べるなら、友達がいないような人がやったほうがいいってことで、『じゃあマツバラさんお願い』って、私がやることになりました」
これまた、切ないきっかけ…。
「でも、世の中は友達が多いことを良しとする風潮がある気がするんです。友達が少ないと嘲笑されるような風潮も。一体、どれほどの人がこの悪しき流れに逆らい、一人でいることを恥とせずに行動できているか…を調べてみようと思ったんです」
最初は他の人のアイデアだったが、気づけばマツバラさんのやる気がムクムクと湧いて出てきたわけである。
●調査開始!
計測方法は、右手のカウンターで総人数をカウント、左手のカウンターで、総人数のうち一人で行動している人のみをカウント。一人でいる人÷総人数×100でひとりぼっち率を算出。
――まずは、ヒカリエに行かれたんですよね。
「そうなんです。一般の人が買い物を楽しめるB3~5Fまでを一通り巡ってカウントしていきました。買い物中は二人連れで来ていても、個々に好きなものを見ているかもしれないので、ショップ内にいる人たちを重点的にカウントしました」
マウバラさんは、華やかな乙女たちの群れを裂くように、野鳥の会よろしくカウンターを鳴らしながら歩いて行ったとのこと。
――結果はどうでした??
「1時間の調査で、総カウント数565人、そのうち、ぼっちの数は108人で、ぼっち率は19.11%でした」
――やはり、意外に高いですね。他にも新宿バルト9(映画館)と東京タワーでも調べてらっしゃいますよね。
「調査したのが昨年の夏休みで、色々な年齢層が観にきそうな『おおかみこどもの雨と雪』のお客さんを対象にしました。ぼっち率は23.68%。バルト9は、カウンターで『チケット何枚』と言って買うのではなくて、ネットで予約して受け取ってから行くので、そのぶん一人でも行きやすいかなって思います。さらに、いかにも『ぼっち難易度』の高そうな東京タワーのぼっち率を調べたところ、ぼっち率は4.05%。
ぼっち率が4%台まで下がって、調査はこれで終わり…かと思いきや、マツバラさんは真夏の片瀬江ノ島海岸でも調査!
――よく行きましたね!
「せっかくの夏だったから、海に行こうと思いまして。徒労と交通費の無駄感がたえませんけどね」
気になる「ぼっち率」は4.49%。
意外なことに、東京タワーの「ぼっち率」よりもやや高め。
実は、マツバラさんはある発見をしたのだった。
「砂浜の後方に長い階段になっているところがあって、そこで寝そべって焼いてるおじさんがたくさんいたんです」
――たくさんのおじさんが!?
「肌が白いよりは焼けてるほうが男らしい感じがするんですかね?ホントに、おじさんばっかりが焼いてたんで。缶ビールを飲みながら寝そべって、読書して…みたいな人が多かったです」
カップルも多くいたが、あまりにもおじさん達のインパクトの方が強かったという。逆にいうと、おじさんは一人でも来やすいということか。
さらに、マツバラさんは果敢にも「東京ディズニーランド」の「ぼっち率」も調査。こちらの詳細は『モッケイエンタテイメント』のサイトでぜひ…。
●マツバラさんの学生生活
そもそも、マツバラさんはどんな人なのだろうか?気になったので、根掘り葉掘り聞いてみた。
――マツバラさんは、子どもの頃から大人しかったんですか?
「昔からずっと人見知りで、自分から話しかけるのは本当に苦手でした。
マツバラさんは汽車が2時間に1本しか通らないような、とある田舎の出身。高校の時は汽車で通学をしていたが、同じ高校の同級生からも「そんな地名があるの?」と言われてしまうほどの田舎だったという。そんなマツバラさんは、晴れて東京の某有名大学に合格!
――せっかくの学生生活だし、友達がいたらなぁ~と思いません?
「そうですね。でも、ベッタリした感じにはなりたくないというか、女子同士だと『ウチらって友人だよね』みたいなノリはあるけど、そういうことを言われると、『いやぁ……ノーサンキュー』ってなっちゃうんですよ。ふと誰かとどこかに行きたい時にあの人が浮かぶ…みたいな人は、私の中では友人としてカウントしようと思ってるんですけど…そういう人もいないんです。逆に、私といたら疲れるんじゃないかなって思いますね。本当に何も話せないんで、芸能の話とかファッションの話とか、何も話すことがないんで…」
確かに、お互いに共通した趣味があればいいけど、それがないと「もはや、何を話したらいいのか分からない」という境地に陥るのはよく分かる。
――マツバラさんが苦手だなぁ~と思う学生は?
「うーん、見た目で判断するようで悪いなと思うんですけど、学食で4~5人とかでいる人はだいたい苦手ですね。あと、授業って、個人個人が時間割を決めるんで、友達と数人で固まることはないはずなのに、後ろの席に団体で座って、ボソボソと喋る人達は苦手ですね」
――そういえば、学食を一人で食べると「友達がいない」と思われそうで、嫌だという人が増えていると聞きますが、どう思いますか?
「私、あんまり気にしません。ウチの大学だけかもしれないけど、食堂に一人で座れるカウンター式の席が多くて、一人の人はそこで食べればいいっていう風になってるんで、一人だから学食に行きづらいということはないです」
このところ「一人焼肉」や「一人カラオケ」が増えているが、マツバラさんは一人焼肉はしたことがないものの、一人カラオケは「ひとカラ」専門店ではなくても、一人で行くという。
「本当は一人でいることは、なんてことはないハズなんですよ。自分が『恥ずかしい』と思うから恥ずかしいだけで、たぶん、二人とか、数人連れの人は、そんな一人でいる人を特別に見てるわけでもないし、それを見たところで、笑うような人は、精神的に幼稚な人じゃないかと思います。一人が恥ずかしいって思うのは、自分の心のせいだなって思いますね。でも、まぁ、友達がいるに越したことはありませんが…」
一人でいることの多い筆者(私)にとって、マツバラさんの話は聞いていて、胸の痛い話の連発であった。マツバラさんのおっしゃる通り、一人でいることを気にしない方がいいのかもしれない。でも、まぁ、これまたマツバラさんがおっしゃる通り、友達がいるに越したことはないけど…。(取材・文/やきそばかおる)
●マツバラさんも参加しているウェブサイト。
「東京ひとりぼっち率」の詳細もコチラで!
『多目的マイノリティマガジン・モッケイエンタテイメント』
http://mokkei-entertainment.com/
「複数の人間が休日を潰して、こなれの悪い試みを行い、
その顛末をみなさんにお届けする、ひょうろく玉のようなウェブサイト」
編集長 中川翼さん