JR山手線や中央線、一部の地下鉄や私鉄などの車両に設けられている、「弱冷房車」。
その名称通り、車内の冷房が弱めの車両のこと。


あらためて考えてみるとこの弱冷房車の「弱」、 一般車両に比べて、いったい何基準の「弱」なのだろうか。たとえばJR線の車内には、「この車両は冷房を弱めにしてあります」といった説明が記されているが、この「弱め」、設定温度なのか、風量が「弱」なのか、はたまた別の基準があったりするのだろうか。

JR東日本に聞いてみたところ、JR東日本の場合は冷房の温度設定が異なるのだという。弱冷房車は、一般の車両よりも温度設定が、
「プラス2度ということになります」
とのこと。
基本の設定については、その路線や時間帯、天候、混み具合など様々な条件によって異なってくるという前提だが、通常は「25度」の設定だとのこと。だから、弱冷房車はそのプラス2度、「27度」に設定された車両だということになる。


状況によって変わることもあるということで、コレ、たとえば車掌さんの判断などで、「今日は35度越えて、特別暑いぞ。少し温度を低めにしよう。ピッ(操作音)」とか、管轄エリア全体を管轄するセンター的なところで、一括して走行中の車両のエアコンを操作していたりするのか、とちょっと妄想したが、そうではなかった。
「ご家庭のエアコンなどを想像していただければ分かるかと思いますが、車両ごとに自動で調整されるんです」
そりゃそうか。

JR東日本によると、JRで「弱冷房車」が導入されたのは、1987年8月のこと。東海道線と横須賀・総武快速線に導入されたのが最初だった。

ここ数年、記録的な猛暑日があったり、夏の平均気温も全体的に上昇ぎみだったりするが、26年の弱冷房車の歴史の中での設定温度の変更は、特に行われてはいないそう。しかし、中央線快速で2008年より導入された新型車両では、設定温度を1度高くしているという。
「お客様のご要望に加えまして、地球環境保護への意識の高まりも考慮して、1度高い設定になりました」
この場合は、一般車両→26度、弱冷房車→28度になっているわけか。弱冷房車も一部、時代の流れに合わせているわけだ。
考えてみれば、中央線の快速といえば、特別快速や通勤快速など、停車駅が少なめのものもある。停車駅が多くて外気が頻繁に入ってくるような車両よりも、冷房効き過ぎ状態になりやすいことも、この路線で1度高め設定が採用された理由のひとつだと思われる。


話はちょっとそれるが、弱冷房車の疑問、もうひとつ。
「弱冷房車」の表記って、真冬もずっと表示されたままである。春夏秋冬季節問わず、「弱冷房車」なわけだが、これにはさして大きな理由はないそう。しかし、
「表示はシール状のものになっていて、頻繁に外すものではないからだといえます。マグネットなどの簡単に外せるようなものでしたらいいのですが、車両数も多いですし」
すべての弱冷房車のシールをはがすことよりも、貼りっぱなしのほうがいい。だから、真冬にも「弱冷房車」は走っているわけだ。
冷房は効いていませんが。

夏もいよいよ本番。ひんやりした車内は気持ちいいけれど、冷え過ぎにも注意したいところでもあり、うまく乗り分けたい。
そんなときのため、「弱冷房車」は今日も「プラス2度」で走っているのです。
(太田サトル)