ハードワークな日本人の目から見ると、デンマーク人の休暇の取り方には驚かされる。多くのデンマーク人は、6月下旬にはそわそわし始め、7月上旬ごろから約3週間の休暇を取得する。また、人によっては1ヶ月以上の休暇を取得する。
「3週間も休んで、その穴埋めはどうするのか? それで商売になるのか?」色んな疑問が湧いてくる。が、その回答は「社会に必要な最低限の機能と観光業を例外として、基本的に穴埋めはしない。夏休み中は、商売にならなくても仕方ない」である。7月中、いつも通勤・通学で混み合う通りは、閑散として、まさに日本のお盆休みやお正月のように、スローでのんびりとした雰囲気になる。
夏休み中、住民向けの商店やレストランは堂々と閉店するし、医者や市町村の公務員なども堂々と連休を取る。その仕事が社会に必要な最低限の機能でない場合は、代わりに穴埋めする人がいないことも多く、その機能が完全停止してしまう。こちらが急いでいるときに、お店の扉に「○日までは夏休みのため閉店」という貼り紙がしてあったり、窓口や電話などで「担当者は夏休み中です。3週間後に戻ってくるので、またその時に連絡してください」などと言われたり、気が遠くなる…。
だが、面白いのは、デンマーク人は、それでいいと思っていること。
その背景には法律という強い味方もある。実際、5月から9月の間に15日以上の休暇を取ることが法律で保障されているのだ。15日間に土日を追加すると3週間になるので、つまりは3週間以上の夏休みを取得する権利が保障されているのだ。国が「国民よ、休みなさい」と言っているようなものである。
そんな中、最近、デンマークの国際競争力を問題視する声もある。「デンマーク人は人件費が高いうえに、休暇をよく取得するので、このままではデンマークは国際競争力を失ってしまう」という意見だ。その意見に「ごもっとも」と頷くデンマーク人は少なくないのだが、かといって、今もっている休暇の権利を返上する気持ちにはなれない。高給を得ながら、休暇を楽しみながら、激化する国際競争にどうやって立ち向かうのか。
(針貝有佳)