だるまの色というと赤が定番だが、先日、30色(!)もの甲州だるま「KOSHU~(COLOR)DARUMA」(甲州カラーダルマ)が発売された。

約400年の伝統を誇る山梨の伝統工芸品「甲州だるま」に30色ものカラーバリエーションを用意したのは、山梨県の伝統工芸や地域産業資源にデザインの要素を加えた新プロダクトを提案している「カガヤカ」プロジェクト。


武田信玄がモデルといわれる甲州だるまは、全国に数あるだるまの中でも、気品・風格が日本一との呼び声が高い。だが近年、その生産数は減り続けている。
「周囲にいる同世代の人にだるまについて聞いてみると、どこに置くの? どこで買えるの? など、ほとんどの人がだるまの正しい知識を知らない。そこでまずは、だるまを手に取ってもらうことを目標にしました」
というのは「KOSHU~(COLOR)DARUMA」を手がけたカガヤカ代表の仙洞田知紘さん。ちなみに仙洞田さんは30代だ。

「ものを買うときに十人十色で好みが分かれるのが、まず色。そこで想像を超えるほどのカラーバリエーションを用意すれば、最低限、色の需要には答えることができるのではないかと考えました」
たしかに30色は想像の範囲外! 甲州(山梨)から全国へ発信していくという目的から、商品名は「KOSHU~(COLOR)DARUMA」とし、「~(から=COLOR)」に「色」の意味も込めている。

カラーバリエーションやパッケージデザインには現代的なアレンジを加えつつも、ベースはあくまで伝統的な「甲州だるま」であるのも特徴だ。
「カガヤカのプロダクトをきっかけに、元となった伝統工芸品や技術に関心を向けていただきたいですね。新しいものを作って販売することで、既存の歴史あるものも一緒に売れてほしいと考えています」
と仙洞田さん。守り続けてきた職人の想いや商品が持つ歴史やストーリーなどを大切にし、皆が笑顔になれるものづくりを目指しているという。

ところで本来、だるまの色にはどんな意味があるのだろうか? 「KOSHU~(COLOR)DARUMA」も製作している伝統工芸士の斉藤岳南さんによれば、
「だるまの赤は昔のさまざまな流行病を避けるため」
とのこと。
古くから疫病神は赤色が苦手といわれ、神棚に赤い札や赤いだるまを祀る風習もあったようだ。このほか、一般的なだるまのモデルといわれる禅宗開祖の達磨大師が着ていた衣の色が赤であったことに由来するという説もある。

もちろん、赤以外のだるまも昔からあった。たとえば、「甲州だるま」にも白い「木綿だるま」があるが、これは農業や養蚕業が盛んだった地域ゆえ、豊作を祈って米や繭の色をモチーフにしたもの。さらに豊作に加えて、家内安全や子孫繁栄を祈って「子だるま」を腹に抱き、親よりも立派な人になってほしいという親心から「子だるま」にも立派なヒゲをつけたユーモラスな白だるま「甲州親子だるま」もある。カガヤカでは「甲州親子だるま」をモチーフにしたOYAKO DARUMAハンカチやおくるみも販売中だ。

ところで、「KOSHU~(COLOR)DARUMA」(甲州カラーダルマ)の色に意味はあるのだろうか?
「それぞれの色に意味を持たせることも考えましたが、叶えたいことと好みの色が必ずしも一致するとは限らないので、とくに定めてはいません。まずは好みの色を選んでいただき、思い思いの願いごとを込めてもらえればと考えています」
色のバリエーションは何百というパターンから、普通すぎない、かつ奇抜すぎない30色を選び出したそう。

約400年前から人々に親しまれてきただるま。ぜひ、お気に入りの色のだるまを見つけて、福を呼び寄せてみては?
(古屋江美子)
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