明治から販売されているロングセラーキャンディー「チェルシー」。同社公式サイトによると、チェルシーという名前は英ロンドン市南西部の地区名「チェルシー」からとったそうだ。


以前コネタでは「チロルでチロルチョコを食べる」という、かなり個人的なネタをやらせてもらった。ならば今回もチェルシーでチェルシーを……。そこで担当編集さんに「あの、今度チェルシーでチェルシーを食べたいんですが……」と、恐る恐るうかがってみると「いいですよ」と二つ返事でOKが!

そんなわけで行ってきた。果たしてチェルシーでチェルシーを食べると、どんな感じがするのか?

向かったのはロンドンのチェルシー地区。最近だとサッカー・プレミアリーグの人気チーム「チェルシー」として有名だが、明治チェルシーが生まれた1971年当時はヒッピー文化が盛り上がっていた時期。マルコム・マクラーレンが同地区の表通りキングスロードに店を開き、ヴィヴィアン・ウエストウッドがそこでデザイナーを務め出した年だ。
ちなみに商品名にチェルシーと付けられる最終候補として残っていたもう1つの案は「キングスロード」だったそうだ。

それなら、せっかくなので「チェルシー」と「キングスロード」という2つの地名が並んだ場所でチェルシーを食べてみたい! そう思い探し始めてみたものの、一方だけなら多くあるがセットで書かれているところはあまり無い。それでもチェルシーを明治チェルシー片手に方々探していくと、ありました!

英大手銀行ロイズTSBのチェルシー支店。建物入口にあるプレートに「チェルシー」「キングスロード」と書かれている。最初は明治チェルシーと銀行のプレートを一緒にパシャリ。次にチェルシーを食べながらの筆者もパシャリ。
端から見ればかなり怪しげだが、警備員さんも見逃してくれているみたいなので、ご好意に甘えて無事終了。さらに通りを進んでいくと、次は地図を発見。ここでも明治チェルシーと地名チェルシーを写真に収めた。

さて、実際チェルシーでチェルシーを食べるとどうなったのか。

ヒッピー文化からUKパンク全盛期の時代に青春を過ごした人にとって、キングスロードと聞けば「アナーキー! 」「シット! ファック! 」的イメージを持つが、現在はミドルクラス向けのブティックが並ぶ落ち着いた通り。尖った雰囲気は全く無い。
そんな中、英国人にしてみれば得体の知れない「チェルシー」と書かれた箱の中身を頬張りつつ、一眼レフで興奮しながら写真を撮っているアジア人こそ「アナーキー! 」であり「シット! ファック!! 」なのである。通りに面したテラス席で、ゆっくりお茶をしていたファミリーの白い目が痛い……。

そんな空気の中に身を置きつつ感じたことは、明治チェルシーは商品のイメージと実際の現地の雰囲気が、とても近いということ。明治が約3000の案から商品名を考える基準にしたという「新しさを感じさせる」「英国のイメージがする」「ひびきがよい」「発音しやすく、覚えやすい」という4点、そして「愛らしい」「女性的」「甘い感じ」「しゃれた感じ」という商品名「チェルシー」に対する当時の消費者テストの意見は、今も英チェルシーで感じ取れる。

海外の地名を商品名にした物の場合、商品と現地の雰囲気が離れていることが多いが、明治チェルシーは両者がとても合ったキャンディーだと現地で確認できたのだった。
(加藤亨延)