50年以上続く朝ドラの歴史の中でも、ここ10年は、平均視聴率13%台にまで落ち込んだ低迷期と、『ゲゲゲの女房』による完全復活、『カーネーション』『あまちゃん』などの大ブームが起こった激動の時期である。
やや迷走に見える作品もあった。
だが、迷い、あがき、立ち上った時期だからこそ、斬新なキャラクターが生まれたときでもあったと思う。そんな10年間の朝ドラにおける「コネタ的キャラ」をふり返ってみたい。

○『純情きらり』の「だべ」
「コネタ的」と呼ぶには不似合いなほどムダにカッコよく、朝のドラマにしては生々しい役どころで、女性視聴者を熱狂させた杉冬吾(西島秀俊)。ヒロイン・桜子(宮崎あおい)の姉の夫でありつつ、ヒロインと精神的不倫関係に陥る。『カーネーション』の周防さんどころでなく、訛りすぎで、とにかく「だべ」「だべ」言いすぎ。

○『瞳』の「ローズママ」
酒場を営む「ローズママ」(篠井英介)が、男の子に「おじさんは、おばさんなの?」と聞かれ、明るく爽やかに大声で「人間よ~~~!」と答えるシーンは衝撃的だった。

○『だんだん』の「キモスカ」
レコード会社のスカウトマン・石橋友也(山口翔悟)。初登場時にヒロイン・めぐみを至近距離からビデオ撮影したり、執拗に追い回したりする様から、「気持ち悪いスカウト=キモスカ」という愛称(?)がネット上で生まれた。落ち込んで泣くヒロインをギュッと抱きしめ、放った甘いセリフがインパクト大!
「泣いてる女の子には、チョコレートをあげるか、抱きしめてあげるか。どっちかなんだ」

○『つばさ』の「ラジオおじさん」
ヒロイン・つばさが悩んでいると、 愛用のラジオから人間になってアドバイスするという妙な役どころをイッセー尾形が怪演(?)。

○『ウェルかめ』の「キモサコさん」
ヒロインの仕事相手の佐古さん(長塚圭史)。ヒロインと付き合っているわけでもないのに、アパートの前で待ち伏せたり、実家まで突然来たり、オフィスでワインを出したりと、ヒロインを付け狙うストーカー的雰囲気が不気味であるから「気持ち悪い佐古さん=キモサコさん」とネット上で命名される。


○『ゲゲゲの女房』の「貧乏神」
村井家にとりついた「貧乏神」と、村井家に立ち退きを迫る「大蔵省の男」と「漫画家・只野」を演じたラーメンズ・片桐仁。『ゲゲゲ~』の前年、同じくNHK『偉人の来る部屋』でも「司会を務める謎の男」を演じていた。この時期、やたらとNHKで「謎」設定で見かけたので、もしかしたらNHKに住む亡霊か何かではないかと思った。

○『カーネーション』の「死にました」
朝ドラに死んだ人が登場することはたびたびあるが、ヒロインが死んで「死にました」ナレーションをしたことには度肝を抜かれた。

○『あまちゃん』のみんな大好き「前髪クネ男」説明略。

○『ごちそうさん』の「ぬか床」
ヒロインの祖母・トラ(吉行和子)が死後、まさかの「ぬか床」に。しかも、ご丁寧にオープニングには「語り:ぬか床(卯野トラ)」という文字が。ヒロインが動揺するたびにぬか床に手をつっこむシーンがあり、意外なかたちで「祖母との触れ合い」が続いている。「ぬか床視点で描かれる朝ドラ」は史上初!

まだまだ語りたりない、朝ドラの愛すべきキャラたち。今後もこうしたひとクセあるキャラに注目してみたい。
(田幸和歌子)
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