出展ブースのテーブルに、むきだしで紙幣が置かれていた。しかし、日本の紙幣に見えたものは、よく観察してみると描かれている動物がやけに目のパッチリした白鳥だったりして、そんな紙幣は現行にも過去にもない。だいいち金額表示も「誤万円」や「偽円」だ。そして裏はメモ帳になっている。ようするに、これはあくまでも架空の紙幣ごっこをスレスレのところで楽しむお遊びなのだ。見た瞬間に「今回の推薦はこれに決まり!」って思った。いざ購入しようと価格表示をを見る。すると、作者は紙幣に値段を付けるのは野暮だと感じたのだろう。頒布価格は「時価」となっていた。
最近、「デイリーポータルZ」で紹介されていて気になっていたのですが、まさか文フリにも出店されていたとは! まったく気づきませんでした(不覚……)。言語と貨幣って、交換するためのツールという意味では、わりと近いところがあると思います。そう考えれば、文学フリマで小説などと一緒に架空紙幣が売られるというのは何らおかしいことではないでしょう。しかしこれ、どうやってつくっているのか、非常に気になるところです。
■『誠壱のタモリ論』(世田谷ボロ市) 推薦者:近藤正高
ライターの石川誠壱さんによる「タモリ論」。タイトルに書き手の名前が冠されているのは、藤圭子の「圭子の夢は夜ひらく」から着想を得たのだとか。
私も以前タモリについて書いたとき