11月28日に先着100万DLまで無料ということで話題になったスマートフォン版ドラゴンクエスト。あっという間に100万DLを達成してしまったため、現在では12月10日まで無料期間を延長しています。
でも、若干炎上というか、操作性の悪さが耐えられないということで話題になっていたりもします。果たして本当に今回のドラクエは駄作なのでしょうか。検証してみたいと思います。

なお、本記事は主にiPhone5s(一部Phone4S)でプレイした感想になっております。

■何が悪いと言われているのか

・バーチャルパッドの操作性が悪い
一番叩かれているのはここでしょう。移動の操作が大変なのです。
ゲームを開始すると一番最初のラダトームの城で、王様の話が終わった後に部屋から脱出するのが困難で挫折する人が非常に多い、というレベルなのです。

一番大きい問題は、キャラクターの移動が1キャラクター分ごとの移動ではなく、キャラクターの半分ずつ、つまり半歩ずつになっている点があげられます。パッドを一回押すと、半歩分移動するのです。

このとき、壁などに半歩分ズレて当たり、その壁の方向に移動すると自動的に横に避けて移動するようになっています。ただし、半歩ずれて人に当たった場合にはそのままそこで移動が止まります。これは、避けてしまうようにすると話しかけづらくなるからでしょう。
ところがそのせいで、人がたくさんいる中で移動するのは非常に面倒になるのです。特に最初の部屋で、「柱兵 兵柱」という1キャラ分しかない隙間を通ろうとしてうまく通れず投げ出す人が多いのです。また、宝箱が3つ並んだところで順番に開けようとすると、半歩ずれた状態では開けられずきちんと正面からでないと開けることができないというのも大きいです。

また、非常に重要な問題として、ゲームをクリアするために必要不可欠な重要アイテムを手に入れるために城からの座標が必要になるのですが、どこにあるかの情報と今自分がどこにいるかを教えてくれるアイテムからの情報とで、半歩換算と全歩換算でズレが生じているという点があります。

また、iPhone5sの場合は特に、最初にパッドが配置されている位置が悪いということもあげられるかもしれません。画面の左下にあるのですが、左手でそのまま親指がパッドに位置するように持ってみると、実に持ちにくいのです。
iPhone5sの縦長の機体のせいで、重心の位置と離れているからでしょうか。

バーチャルパッドは「さくせん」の「せってい」で大きさと位置を変更することができます。個人的にはまんなかに配置して、「大」にするのが右手でも左手でも操作しやすかったので、そのようにしています。手の大きい人は、左手で遊ぶときは右に、右手で遊ぶときは左に配置する方がいいかもしれません。

ちなみに決定ボタン兼調べるや話すができる便利ボタンは画面に表示されていません。パッドの真ん中をタップするか、画面内のどこかをタップすることで押せるようになっています。
最初に画面内のどこでもということに気づかなかったのと、パッドの大きさが小さかったため、これを押すのにも非常に苦労しました。

・全体的にもっさりしている

メッセージの表示速度は8段階から選ぶことができるのですが、これを1番早くしてもあまりテンポ良くメッセージが表示されません。特に戦闘終了時には、次の表示が出てくるまでに一拍おいた感じになります。

「てきをやっつけた!」→ファンファーレ(レベルアップ時のではなく)→ほんの少し間があって「1ポイントの経験値をかくとく!」と出てくるのですが、ファンファーレ中と間の時は画面をタップしても何も反応しません。外などで音を消して遊ぶと特にこの間の部分でもっさり感を強く感じることになるのです。

・何かあるところがキラキラしている

これは善し悪しではあると思うのですが、地面に何かアイテムが埋まっている場合、そこがキラキラと光って表示されています。
3カ所しか無いのですが、そのどれもが謎解きによって場所を探すものだったりするので、最初から光っているのは少し興ざめでした。せめてその情報を得てから光るようにして欲しかったです。

・画面のバランスが良くない

基本的なグラフィックはドット絵を拡大したものになります。なので、画面は綺麗ではなく、ややドットが粗いと言える画面になります。でも、文字だけは綺麗に今風に表示されているのです。もちろん文字は読みやすいに越したことはないのですが、バランスが良くないと感じている人も多いでしょう。


ドット絵の拡大でいくのだったら文字もそれっぽく、文字を綺麗にするのだったら画面を作り直して綺麗にすればこういった違和感を感じることはなかったでしょう。

また、iPhone5sだとかなり縦長に表示されます。これはiPhone4Sで遊ぶとわかるのですが、普通のゲームなら上下の部分を黒帯で切ってしまうのを、全部表示しているからになります。そのため、戦闘時のウインドウや表示などが画面下に寄っていることになるのですが、それはそれでさまざまな機種に対応させるべく頑張った結果でしょう。

【付記】現在は黒帯で表記するような仕様はAppleの審査で落とされる(黒帯のものはiPhone5発売以前のアプリが対応できていないだけで、わざと黒帯にすることはしてはならない)ということを読者の方から教わりました。訂正いたします。

・横画面に対応していない

これは今後何とかして欲しいことの筆頭かもしれません。縦画面だけに対応していて、横画面で表示することができないのです。片手で操作することが前提で、縦長の画面が前提となっているのですね。

移動中などの外で遊ぶときには片手でさくさくと遊ぶのもいいのですが、家でやるときはじっくりと横画面でやりたいという人もいるでしょう。片手で長時間操作をすると疲れてしまいます。ここは設定などで対応して欲しかったところです。

・ポータルアプリなのに複数機種で移動ができない

個人的に一番残念だったのはこれです。今回のドラクエは、単体のアプリではなく「DQポータル」というポータルアプリの中のアプリという位置づけになります。今後他のドラクエシリーズが出た場合(今月中にドラゴンクエスト8が出る予定です)、このポータルアプリ内にどんどん追加していく形になります。

そういうアプリがあるにも関わらず、複数の端末の間でセーブデータの移動ができないのです。家ではタブレットで、外ではスマートフォンで遊ぶとかそういうことができないのですね。だとしたらユーザー側にとってポータルアプリであるメリットはあまりないのかな、とも思ってしまいます。ここは今後のアップデートに期待したいところです。

■いいところはないの?

さまざまな不満点を挙げましたが、いいところももちろんあります。例えば半歩問題に関してですが、終盤になって手に入る「ロトのよろい」を装備しているときに歩いて回復するペースが、1歩につき1点ではなく半歩につき1点となっています。つまり、ファミコン版で1歩の距離を歩いたときには2点回復するのですね。かなりのペースで回復します。おかげで、最後のボスに挑むときには道中であまりホイミややくそうを使わないでも済みました。

戦闘時のコマンド選択もタップで直接ボタンが押せるようになっていて、ここの操作では不満はほとんどありません。基本的にタップするところは画面の下の方に集中するようになっていて、普段の会話のときには下の部分が空いてタップエリアに、戦闘時はそのタップエリアにコマンドが並ぶようになっていて、大きく指を動かす必要があまりありません。ここはよく考えられているなと思いました。

また、全体的にレベルがあがりやすく、レベルアップ時のパワーアップが大きくなっています。おかげで非常にさくさくとゲームが進行します。早い人は数時間で、じっくりやっても10時間ぐらいでクリアできるでしょう。移動中にだけしか遊ばないという人でも、そろそろクリアしている人が出ているのではないでしょうか。

ゲームの中断がいつでもできるのも大きいです。「さくせん」の「ちゅうだん」でいつでも「ちゅうだんのしょ」にセーブできますし、ただ単に中断するだけだったらそのままホームボタンを押してしまえばいいのです。次に起動するときにはタイトル画面のところに「オートセーブから再開」が出ていますので、すぐに再開できるようになっています。

思い出補正が入っている可能性はありますが、ドラクエはやっぱり面白いのです。それがさくさくと、いつでも中断でき、手軽に遊べるというだけで楽しいのですね。なので操作に多少の不満があっても、ついつい遊んでしまい、気がついたら操作に慣れてクリアしてしまった。というわけです。

■もうちょっとスマートフォンに寄せたものが出てくることに期待したい

もともとドラゴンクエストシリーズは細部に至るまで気を配られて作られている作品です。出てくる漢字ひとつをとっても、ジャンプに出てくる漢字だけを使うというような点です。

ドラゴンクエストで一番顕著なのは最初の部屋でしょうか。ここで色々なコマンドを学び、宝箱の開け方を学び、武器や防具は装備をしないと意味がないということを聞き、扉の開け方を学んで外に出られるようになっている、つまり自然とチュートリアルをやっているようになっているというのは有名な話です。

今回はそこで、人と人との間を移動するのが難しかったため、失望してやめてしまった人が多かったのではないでしょうか。

もともとファミコンからスーパーファミコン、ゲームボーイ、フィーチャーフォンと移植されるごとに、色々と遊びやすく改良されてきた作品です。だとすると、今回もスマートフォンらしい改良点があると無意識に期待していた人が多かったのだと思います。それこそよくあるスマートフォンのゲームのように、最初に一枚でいいので『ここで動かします』『パッドはさくせんから位置を変えられます』みたいな吹き出しでの説明があっても良かったのかもしれません。

ドラクエの伝統的にはそういう露骨なチュートリアルではなく、会話の中で説明するというものがあります。実は今回にも「さくせん」の中に「たびのこころえ」があって、そこを読むと大臣が色々と教えてくれるようになっています。うごきかた4つのポイント、というのもあるのですね。でも、それがあることに気づいたのは結構後のことでした。一応最初に兵士が「こまったときはさくせんを開いてください」とは言っていたんですが、まさか操作で困ることまで載っているとは思わなかったので……ここはもうちょっと強く、できれば書いた大臣が自ら「そうそう。たびのこころえを書いておいたぞ。さくせんから開いて読めばきっとおぬしの役に立つだろう」と言ってくれていれば良かったと思います。まあ、これは普段から説明書を読まない僕が一番悪いのですが。

いずれにせよ、メリットよりもデメリットが多かった半歩移動など、そういう細かい点まで今後の作品では気を配ったものが出ることを期待したいところです。

12日には初移植となるドラゴンクエスト8のスマートフォン版が配信開始されます。移動の部分にはAUTOモードのような工夫があるようですが、果たして今回のドラクエよりも操作感は良くなっているのでしょうか。また、予告ムービーを見ると、縦画面のみになっているので、なんとか横画面対応で出てくれないかなあと思いつつ楽しみに待つことにします。
(杉村 啓)