連載開始から3年が経ち、2014年1月現在でコミックスも9巻まで発売中で、宝島社の「このマンガがすごい!2014」では17位にランクイン。
タイトルの「アオハライド」とは、青い春(アオハル)に乗っていく(ライド)という意味であり、まさにその名のとおり、青春の恋愛模様を描いた作品。
高校生のヒロイン・吉岡双葉は中学時代の初恋の相手・田中(いまは馬淵)洸に再会するが、昔とは違って冷たい人になっていた。
それでも双葉は昔の洸ではなく、いまの洸も好きだと気づいていく───。
これだけ聞くと、よくある王道の恋愛漫画かなと思いますよね。
そんな、悪く言えばありきたりな少女漫画がコミックス累計442万部突破、かつアニメ化という人気を集める作品になっている。
その理由は何か。ズバリ言えば、王道なんですよ。
●描かれているのは恋愛模様と友達関係。
●登場人物たちは部活などのスポーツに打ち込んだり、変わった性格や能力などもない。
●恋愛はふたりの会話や行動で進展していく。
もちろん絵柄のかわいさ、言葉遣いや間の取り方のうまさもあります。
さらには胸キュンできるシーンが多く、物語にハマるとそこが楽しくてたまらなくなるのですが、
これだけなら他の少女漫画と何が違うの?という疑問がうまれますよね。
実を言うとイマドキでは考えられないことが起こっています。
メールや電話で恋が発展するというシーンがない。
つまり、好きな人に電話したとか、メールがきたとか、そういったシーンがありません。
もちろんケータイが連絡手段として使われることはありますが、主人公の恋愛模様には一切関係ない。
昔の少女漫画ならそういったことがなくても普通ですよね。
でも現在連載中であり、舞台は現代。ケータイとか普通に使うイマドキの女の子たちが読む少女漫画雑誌に掲載されているんです。
その読者に支持されて連載が続き、コミックスは売れています。
つまり、現代ではありえないような恋愛模様を描いていて、
気づかぬうちにそこが漫画らしいフィクションであり、読者に憧れを抱かせているんです。
漫画を読むとき、あまりにも普通になったらおもしろさがないですよね。どこかしらに憧れのようなありえないことを求めて読んでしまう。
たとえば、クラスメイトの憧れのイケメンが暗い性格(実際はそうではない)の自分を好きだったとか(「君に届け」)、
身長2メートルのゴッツい男が小さくてかわいい女子高生を助けて告白されるとか(「俺物語!!」)、
といったように、フィクションならではのありえない設定で読者の感心をひいたり、憧れを持たせたりすることが大事です。
その後は普通の恋愛漫画になってもいいけど、まずは読んでもらえないと意味がないですから。
ちなみに「アオハライド」の作者・咲坂伊緒の前作「ストロボエッジ」もまっすぐな恋愛物語。
こちらは恋愛したことがない普通の女の子が、学年一の人気者に初めて恋をし、序盤から告白してフラレてしまうんですが、あきらめずに一途にずっと頑張る、というもの。
それもそこまで大事件はないのですが、「ストロボ」と比較しても「アオハライド」は初恋の男の子と再会したということだけで、いたって普通。
実際、私も最初は様子見だったんですが、いつの間にかこの作品に心をつかまえていく。
それは
現代ではありえない、言葉と言動だけで進んでいく胸キュンする恋愛
にあるのだと考えています。そしてその胸キュンポイントの描き方がかなりうまい、ということにつきます。
そんな「アオハライド」の胸キュンポイントもいくつかご紹介します。
できるだけネタバレしていないのでご安心を!(でも絶対ネタバレNGなら読まないでくださいね)
1
かなわなかった、かわいらしい初恋
中学生の頃、男嫌いの主人公・吉岡双葉が隣のクラスの田中洸を、初めて嫌じゃない男の子だと思い始める。彼を見れば、必ず彼も自分を見てくれていたとう、胸キュンポイントがココ。
私たちは目が合うと
必ず一度そらして
また合わせる
うーん、かわいい恋愛!
その後、夏休みにふたりでお祭りに行く約束をします。
ドキドキしながら待ち合わせをしていたけど、彼はこなかったのです。
誰でもいい感じに見えたのになんで?!
夏休み明けに理由を聞いてみようと思っていた双葉でしたが、洸は引っ越してしまったのです。
そして高校生になって、ふたりは同じ高校で再会するのです。
2
友達が自分と同じ人を好きになる
好きな人がかぶるって、学生ならではの悩みな感じで、青春だな〜としみじみ。
仲良しグループの友達が、自分の好きな人を好きになってしまうんです。
友達を取るか、好きな人を取るかで悩み、友達に自分の気持ちが言うか言わないかで悩んだり、ふたりの会話や行動が気になったり、乙女モードに拍車がかかります。
まずは自分で思いを何度も確かめつつ、放課後、友達に打ち明けます。
「私も洸のこと好きなんだ。好きな人かぶってごめん」
3
好きな人が徐々に優しくなってくれる
帰ってきた初恋の相手は、最初はそっけないのですが、夏祭りに来れなかった理由なんかを聞き出すうちに、徐々に打ち解けます。
その後、ちょっとしたイチャイチャ行動がふえていくんです。
同じ机に頭を乗せて、顔が超接近したり、ガヤガヤしているところでは顔を近づけて話したり、
しまいには「おまえ、俺のこと好きなの?」とか確信にせまることを聞いてくる洸。
女の子らしくしようと振る舞う双葉がグロスを塗って登場すれば
「似合わない」
と言って、双葉のくちびるからグロスをぬぐっちゃう。
このような日常の何気ない行動や言動を見るだけで、双葉がいちいちキュンキュンさせられていき、もはや恋がとまらない状態になっていきます。
4
あと少しのところで届かない、もどかしい恋にもんもんとする
物語が進むごとに、もうつきあっちゃいなよ!というぐらい、あと少しってところまでいく。
双葉が別の男の子と話していたのを見た洸は、ちょっと焼きもちをやいたのか、
「イチャつくならもっと違うところでイチャつけ ばぁか」
と言い放ちます。すると、それを聞いた双葉は冗談半分で泣きまねをすると、洸はあわててフォローし、様子を伺いながら、
「泣くなよ」
って抱きしめたあげく双葉の髪の毛にキス。
そんなやついないよーーー!
もはや双葉の恋が絶頂を向かえるのですが、洸の友女友達の登場でふたりの関係は後退。
それでもまた、洸との距離をたぐり寄せようとする双葉は
いろいろ努力した双葉が諦めて距離を置くと、また近づくという、もどかしい展開になっていく。
思いっきり消化不良を引き起こしております。
5
まっすぐにアプローチしてくる男の子の登場
なかなか届かない恋愛で心が弱っているとき、別の男の子に告白される。
最初はその気もなく、好きな人に向かってがんばるつもりだったが、彼のまっすぐなアプローチに心が揺れ動く。
「吉岡さんが好きなんだ」
思いっきりストレート直球勝負に出たのは、他のクラスの菊池冬馬。
しかもひざまずいて、手を取っての告白シーンという、まさに王道のプロポーズのよう。
双葉はそのままの自分が好きだという菊池の出現にとまどうものの、これで揺れない女子はいない!
自分のことを選ばない男を、いつまでも思うのは青春の無駄づかい!
いつまでも好きでいると思うなよ!
こうして双葉は自分の恋をふりきらねば、と思うんです。
ネタバレしないよう要素をざっくりあげましたが…。
シーンと表情、そして言葉が絡み合って作り出される胸キュンシーンの数々は、物語が展開していくほどに増えていく。
とにかく5巻までは読んでみれば、きっと「アオハライド」の世界に浸れているので、その後は自ら続きが読みたいと思うはず。
別マのサイトでは、アオハライドのプロローグ編「アオハライド unwritten」と「アオハイド」の序盤が試し読みできますので、ぜひご覧ください。
もちろんアニメも楽しみですね。いまは双葉が内田真礼、洸が梶裕貴のふたりのキャストのみの発表で、放送日程等の具体的な話が出ていないので続報に期待ですね。
(小林美姫)