バスの正面、側面などに「○○行」と表示する、みなさんよくご存じの行先表示器。それが、プレートに書かれたものを動かして行先を変更する字幕式から、いつの間に流行りのLED式になっているのはお気づきだろうか。
実は、そのLED行先表示器にはおもしろい意外な秘密が隠されているのだ。

肉眼ではどこからどう見ても止まって見えるLED文字だが、写真に取るとキレイに映らず、文字がかすれたようになってしまう。「本当に静止しているのか」と疑問に思い、LED行先表示器を製造しているレシップ株式会社に聞いてみた。

「LED式行先表示器は点滅しています」
と担当者。え、点滅しているってどういうこと?

LED式行先表示器は多数のLED素子の集合体でできていて、そのひとつひとつを点灯・消灯させることにより文字を作っているのだという。驚いたことに、文字を表示しているときも常時点灯しているわけではなく、高速で点灯と消灯を繰り返しているのだそうだ。

「瞬間的には、LED式行先表示器の横方向一ラインしか点灯していません。一ラインの点灯は、周期的に点灯する位置をずらしています」
え、それってつまり?
 
「最上段のLEDを点灯させ、その下の1列を点灯させ、さらにその下の1列を点灯させて……と高速に点灯・消灯の制御をしています」
たとえば、縦の表示ラインが10ラインあるとすれば、LEDの素子としては10回に1回点灯させればよいわけであり、すべてのLED素子を点灯させた場合と比較して10分の1の電力で表示させることができるため、このような制御を行っているという。

なるほど、常時点灯より点滅させているほうが節電効果があるのはわかった。でもどうしてそれが止まって見えるのだろうか?
「人間の目には残像が残ってみえます。残像が残っているうちに、再度点灯させているのでLED式行先表示器で表示している文字を読み取ることができます」

その他にも、LED式行先表示器のメリットがあった。
「バスの行先表示器の字幕式の頃は、行先名が変更となった場合は幕を表示器から取り外して新しい幕に交換しなければならず、メンテナンスに時間を要していました」
「その点、LED式行先表示器であれば、新しい表示データを作成するだけで済むようになりました」
なるほど、デジタルならではの良さですね。


しかしまぁ、こんなところにもデジタルのメリットというか、隠された工夫があるのには感心した。
(羽石竜示)
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