いまいち盛り上がりに欠けた感のある選挙ではあったが、投票の結果を受けて、ひとりの候補者が注目を浴びている。
産經新聞から「これはもう善戦どころではない」と評された田母神俊雄だ。(2月12日朝刊「産經抄」)
約61万票(全体の約12%)を獲得した元航空幕僚長の特筆すべき点は、なんといっても若い世代からの支持である。
朝日新聞の出口調査によると、20代では得票率約24%で第2位。また30代でも約17%で第3位となり元首相細川護煕を上回った。
票を伸ばした理由のひとつに、ネットを中心として愛国的あるいは右翼的な発言をする人々の支持を集めたことが想像される。
「ネット右翼」や「ネット保守」などと呼ばれる彼ら。私は昨年「反韓デモ」を取材したが、過激な言動とは裏腹に、その実態は職業右翼らとはかけ離れた「普通の人々」であった。
しかし取材を通しても、彼らの心情は私には分からなかった。
『ネトウヨ化する日本 暴走する共感とネット時代の「新中間大衆」』は、ネット社会のなかで現代日本人の精神がいかに変容したかを論じる社会評論である。
著者の村上裕一は84年生まれの若手批評家。「東浩紀のゼロアカ道場」出身者であり、サブカルチャーやネットカルチャーに詳しい。
著者が用いる「ネトウヨ」という語は、ネット右翼の略称というだけではない。本書を読むと、それはインターネットのひとつの傾向、現象のことを指していると考えられる。