ソリティア×競馬ーー決して出会うはずのない二つが出会ってしまった『ソリティ馬』。本作がニンテンドー3DS用のダウンロードソフトとして、500円で発売されたのが昨年の7月末のこと。ソリティアといえばWindows(7まで)を買うとマインスイーパーと一緒に付いてくるタダゲーの代名詞であり、500円でも高くない?と怪しんだものです。それから1ヶ月だけで、総プレイは100時間を軽くぶっちぎり。史上最高に遊びがいのある500円でした……そして時間ドロボー!
『ソリティ馬』は、ゲームフリーク初の自社パブリッシングタイトル(自社名義で発売するソフト)。ゲームフリークは『ポケットモンスター』シリーズの制作会社ですが、本作にはピカチュウもロケット団も出てきません(それっぽい名前の馬はいますが)。ポケモン抜きでもドハマリする面白さで、発売から半年以上たった今でも「俺の時間を返せー!」「単位を落としたよ……」といった被害届が後を断たないんですね。
まずは馬主から2歳の馬を任される「若駒モード」。出走させたら観ているだけの某競馬ゲームと違い、馬を走らせるのはジョッキーであるプレイヤーのお仕事です。お馬さんをやる気にさせるのは、もちろんソリティア。Windows用のソリティアは「フリーセル」という種類ですが、こちらは「ゴルフ」と言われるタイプ。山札のカードの数字と±1のものを場札から取り除き、全てなくなればクリアです。
カードを上手く取れば取るほど“折り合い”がアップし、馬が本気で走ってくれる。逆に多くのカードを残すと、馬がいうことを聞かなくなって暴走し、スタミナを消費して終盤がバテバテになります。スタートダッシュの良し悪しもソリティアで決まるので、腕前が上がれば上がるほど「強くなった!」と喜びをかみしめられるわけです。
お次は馬の走りを操作する「コントロールモード」。画面をペンでコスって“折り合い”を「気合」に変換し、線を描いて走るラインを決める。コース上には白い帯になっている「ゾーン」が3つあり、LV3なら気合いもたまりやすいが場札も「こんなん取れるかー!」的になる。LV1は気合は溜まりにくいけど、場札のカードが減って楽ちん。コースの上下(インとアウト)でも差があり、「バクチに出るか、アンパイをとるか」という計算が悩ましいんです。
さらにソリティアでパーフェクトを取れば、LV2ならスタミナが減らなくなり、LV3だと「人馬一体」状態で、寄ってきた馬たちをガンガン弾き返します。スタミナもへろへろで馬群に囲まれたピンチのとき、人馬一体を決めるとアイテム(各種効果がある)も集まってサイコーに気持ちいい!
1レースはものの数分でサクッと終わる。あと、もう1回で止めるんだ……と誘惑に負けた瞬間、今日の仕事も宿題も諦めましょう。
ああ、充実した2年だった……「古馬モード」へようこそ。若馬から古馬になった4歳1月から再スタートし、3回負けるか「寿命」を迎えて引退するまで、好きなだけレースに挑戦しほうだい。天皇賞や安田記念、秋華賞などレースの優勝杯は21種類あり、連勝を続けていると世界の最高峰レース「キングスゲート」のトビラが開かれます。
このキングスゲートが化け物クラスの馬ばかりで、どうあがいても勝てない? 大丈夫、そのための「牧場」です。引退させた古馬どうし、♂と♀をカップルにして強い若駒を作るダビスタ要素もしっかりあります。底なし沼という名のサービスですね。
レースに勝ち続けるとチラリと見える、馬主たちの人生も味わい深い。成金まるだしの「がんのすけ」さんが競馬で目立ちたいのは生き別れの両親に見つけてもらいたいからとか、アイドルの「ひよこ」は芸能界での生き残りを真剣に考えてるとか。それを主人公が「かしこまりー」と軽く流すユルさがたまりません。
アイテムを売りにくる「つばめちゃん」のお店で、ガチャロボ「コンプくん」(いいのかこのネーミング)にゲーム内の100万円をつぎ込んでパズルのコンプリートを目指すもよし、ネコが乗ったかわいすぎる「マタタビダッシュ」やメカメカしい「ロボタイブ」など特殊馬を揃えてもよし。君もアナタも『ソリティ馬』に100時間を溶かそうぜ!
(多根清史)