桜木「島田雅彦さんに会うってことでいろいろ聞いてきたんですけれど、島田さんは巨乳が好きなので詰めものをしていけってアドバイスされて、さすがにそれはしてませんが」
島田「いや、巨乳にはふたつ、巨大なほうと、空虚なほうがあって、どちらも好きですから、ご安心ください」
と、いきなりの応酬からはじまった芥川賞直木賞フェスティバル2ステージ目。

芥川賞直木賞フェスティバル速報その2。

13時から14時は、
『ホテルローヤル』で第149回直木賞受賞式にはタミヤロゴ入りTシャツで現れた桜木紫乃と
芥川賞最多落選記録『島田雅彦芥川賞落選作全集』って作品集もある島田雅彦。
テーマは「小説の中の男と女」。

飛道具を持ってきたという桜木がDVDを出して、
「島田雅彦主演映画のDVD『東京の嘘』を持ってきたんですよ。最初のせりふが、セックスしたいの?で、素としか思えない。あれ演技だったんですか」
が、島田雅彦はまったく動じず。
「火災現場、まだ焼け跡がくすぶってるところで、サンマを食べる大学教授の役でね」
「メイキングで、監督が、素でやってると思います、って言っていて、わたしもそう思ってます」
「演技がうまい人は、脇で名バイプレイヤーとして活躍するんですよ。
主役やる人は演技しない、ただそこにいるという感じがします。過剰に演技しちゃいけないんです」

官能を描くということについて。
男の作家と女の作家で、どういうところが似てて、どういうところが違うのか?
島田「男のほうが偏見に満ちている こうだっていう思い込みが強い気がします それが転じて男根中心主義みたいになります おらおらっていう、ね。してほしいんだろ、って、相手はそう思ってないのに。喜ばせてやるっていうスタンス。どんなフェミニストにも心の底にあると思う」
島田さんにも?
「あるでしょうね、退屈な男子としては。
女性は、それを受け入れることを決めたら、動じない。目覚めた場合の射程距離が女性のほうが高いんじゃないか」

「男は少年、でも女は違うんだ」という話題に展開して。
島田「男はずっと少年を守ってる。でも、女性だっていくつにもなっても乙女でしょ」
桜木「男は少年にもどる、女性はどんどん脱皮していける」
島田「魔女になるってこと?」
桜木「魔女ですかね、術は使えるようになるけど」
魔女つながりで島田雅彦が、ナウシカ=峰不二子説を披露。
風の谷のナウシカ、宮崎駿がルパンやったすぐ後だからキャラが似てる。
ナウシカ、風の谷にいたころは、みんなのために自己犠牲的にがんばった、無理解な大人たちのあいだでがんばりすぎてやんなっちゃた。

いやになってセルフィッシュになって グラマーになって、峰不二子になっちゃうんですよ。ハニートラップしかけるようになる。彼女にもナウシカみたいな時代があった。
司会「桜木さんにも」
桜木「わたしはつねにナウシカですよ」
島田「声はナウシカじゃないよね、八代亜紀っぽいね」
桜木「やっぱり、演歌ですか、わたし」
と、話がどんどんあらぬほうに転がりながらも、「ナウシカから峰不二子になるまで」が物語であり、小説こそがそこを埋めるのだという話に。

その後も、どんどんトークは転がっていき、進行役の人が最後にテーマにもどして。
島田「男も女も、そんなひとことでは言い切れないのですが、根は乙女だったり、随時変化を繰り返していくという話にもなりましたが。
あ、おばあさんに親切にしようと思いを新たにしているんですよ」
桜木「それをこっち向いて言いますか」
島田「いや。学生が、横断歩道をわたるおばあちゃんに親切にして一万円おこづかいもらったらしくてね」
って話から、オレオレ詐欺の話に転びながらも、
島田「でも、詐欺師は、ひとの求めるものを与えてるわけでね。もちろん詐欺はダメですが、ひとの機微をうまく読んでるわけですよ、彼らも。ひとの機微をよむというところでは、小説家に似ている」
とやっぱりちゃんと小説の話に着地するのだった。

詳しくは近日、青柳美帆子がレポします。
(米光一成)

「芥川賞&直木賞フェスティバル」速報!リンク集
綿矢りさ&道尾秀介:作家は破滅的な職業か編
島田雅彦&桜木紫乃:男は少年、女は魔女編
北村薫&宮部みゆき&桜庭一樹:ビブリオバトルでガチ勝負編
北方謙三&川上弘美:殴り合いをして小説書いての繰り返し編

・辻村深月&円城塔:大人が薦める本を書いてたまるか編

・川上未映子&桐野夏生:男が搾取してきた日本文学編
・角田光代&奥泉光:直木賞選考委員は欠席ばかりしていた編
・林真理子&浅田次郎:映画やコミックだけじゃ底が浅い。
本を読め編