「私は何がほしかったというと芥川賞がほしかった」という北方。
「私は芥川賞をいただいたんですけど出身はSFなんですよ」当時、SFの新人賞がなくて困ったという川上。


芥川賞直木賞フェスティバル3月1日、一日めの最後のステージは、「蛇を踏む」で芥川賞受賞の川上弘美と、角川小説賞、吉川英治文学賞、司馬遼太郎賞、日本ミステリー文学賞、紫綬褒章ほかたくさんの受賞歴のある北方謙三。

ふたりが小説家になった経緯が語られた。

同人誌に書いていたという北方。
中上健次や立松和平と、議論し、自分を曲げないから結局は殴りあいになる。
殴りあいをして小説かいて、殴りあいをして小説かいての繰り返し。
原稿を重ねると自分の身長より高くなるほど書いたが、載ったのはほんの少し。
書いても書いても没にされた。
エンタテインメントに転向したとき、立松和平には「自分の身を切って書いてた、タコ踊りだったよ。いまは気持ちよさそうに書いている」と言われたが、中上健次には「裏切りもの裏切りもの、原稿料いくらなんだ」って言われたとか。

川上弘美は、SFマガジンの新人賞がなくなって応募するところがなくて、筒井康隆さんが選考委員をしていたら応募しようと思っていたところ、筒井康隆・井上ひさしが選考委員の新人賞があったので応募しようと思っていたらすぐ終わってしまって、応募するところがなくて。
パソコン通信で、筒井康隆・小林恭二が審査委員の新人賞があってそこに応募。賞をとってようやく世に出たけど、編集がつかなくて、読んでくれるひとがいない。
だから、編集者に読んでもらえてボツになるというのも、うらやましかった。

むかし書いたものを読んで、よくこんなの書けたなと思うことありません?という川上の質問に、北方は「書けてしまうってのあるよね」と答える。
書こうと思ってるうちは書けなくて、知らないあいだに書けちゃうと書ける。
川上「自分が支配しようとすると書けない。だから、作家はちょっとバカじゃないと」

ほかにも、自分自身を刀で斬るエピソードや、生きていくために小説は必要なのか? どのような一日なのか? 毎日何枚ぐらい書いているのか? など、さまざまな話題が飛び出した。
詳しいリポートは、近日中に青柳美帆子がお届けします。
乞うご期待。
(速報担当:米光一成)

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