子どもの頃は、おつかいのときなどに「ホール缶じゃなくて、クリーム缶のほうね」と親に言われることもあるほど、両者がスーパーで同等に扱われていた気がするのだが、最近はスーパーにクリーム缶を置いていないところもよくある。
そもそもホール缶とクリーム缶の売上って、どのくらい違うもの? アヲハタのコーン缶を扱うキユーピーに聞いた。
「現在のホール対クリームの売上数量比率は、約2対1です。でも、この5年で見ると、クリームの売上減少が特に著しい、ということではありません。全体的に、昔に比べて売上は減少傾向で、2008年度に比べて2013年度は約1割減となっていますが、これは缶詰商品全般について言える傾向です」
また、意外と忘れがちだが、コーンは季節商品だということもある。
「コーン缶は年一作もので、天候に出来高が左右されることもあり、生産数の調整は、主に母数が大きいホール缶で行っています。まず、クリームの分を確保するということです」
では、家庭でクリーム缶を使ってコーンスープを作る人は減っているのだろうか。
「主婦世帯におけるコーンスープの食卓登場頻度は全体では減少傾向ですが、クリーム缶を使用する『手作り派』は、数は多くないものの、維持の傾向にあります。というのも、コーンの出来高にかかわらず毎年クリーム缶は確保されている一方で、チルド品やインスタント粉末タイプのコーンスープの利用は減少しているからです」
チルドやインスタント粉末のスープは、多様化しているため、人気が分散するのだろうが、自分のように「コーンクリーム缶で作るコーンスープが好き」という人は変わらず一定数いるようだ。
ところで、そもそもコーンスープは海外ではあまり飲まれないとも聞く。ネット上には、海外在住の日本人がコーンスープ缶を探していて、なかなか見つからないという声も多数あるが……。
「海外の事情は詳しくは存じ上げませんが、確かに、キャンベルさんの母国アメリカではコーンスープは商品ラインアップにないようです。
そこで、キャンベルジャパンに、海外のコーンスープ事情について聞いてみたところ、こんな回答があった。
「おっしゃる通り、欧米では一般的ではありません。弊社のキャンベル濃縮缶スープ『コーンポタージュ』という日本語表記の製品は、日本人向けに開発された日本専用の製品です」
日本で同社が濃縮缶スープ「コーンポタージュ」を発売したのは、約30年前。現在に至るまで味の改良を何度も行ってきたそうだ。
ちなみに、アメリカと日本とでは、商品の売れ筋の傾向は異なるのだろうか。
「アメリカと日本では、売れ筋の傾向は確かに異なります。アメリカでのTOP3は、(1)トマト、(2)チキンヌードル、(3)クリームマシュルーム。現在の日本のTOP3は、(1)ニューイングランドクラムチャウダー、(2)コーンポタージュ、(3)ミネストローネです」
国や時代によって変わるスープの好み。それでも、「甘いもの=ごちそう」だった時代のなごりなのか、日本のコーンスープファンは今も根強くいるようです。
(田幸和歌子)