自動販売機は便利だ。ジュースもお菓子もアイスクリームだって、24時間いつでも買える。
そんな自動販売機業界に、新たな旋風が巻き起こっているのをご存知だろうか。
それは、和風出汁。
自動販売機で出汁を買える時代がやってきたのである。

その名前は”だし道楽”。製造されているのは広島で醤油制作に携わる、二反田醤油さん。
およそ3年をかけて生み出されたのが、だし道楽だ。
素材は焼きアゴ。上品な味が特徴という。
「平成18年11月に『うどん屋だし道楽 吉浦店』をオープンさせ、うどんの提供とともに店内で出汁など各種商品を販売しておりました」
このうどん屋も、あくまでもだし道楽の味を知って貰うため。つまり「美味しい出汁を皆さんに味わってもらいたくて、うどん屋をはじめました」つまりは出汁が全てのはじまりなのだ。

当初はうどん屋だけで販売していたのだが、少人数での運営なので営業時間は10:30~14:30のたった4時間。もっと売って欲しい。
いつでも買えるようにして欲しいという声を受け、それなら24時間売れるようにしてはどうかと、店の前での自動販売機販売に踏み出した。
それが平成19年7月のこと。しかし、この出汁が生み出されるよりずっと前。代表者の父が醤油屋を始める頃から、自販機での販売はすでに考えられていたというから慧眼である。

普通はジュースが販売されている自動販売機に、並ぶのは茶色い出汁のペットボトル。しかも焼きアゴや昆布が沈んだペットボトル。
なかなか迫力のある図だが、そのインパクトだけではない。自動販売機で売ることの利点もある。
「ペットボトルの中で昆布と焼きアゴの素材の旨みをだすのも目的です」
自動販売機で販売しているのは500mlの2種類。焼きアゴ入り(500ml):650円。昆布入り(500ml):450円。
賞味期限は製造日よりおよそ1年だが、薄口醤油の特性で液体の色と風味が濃くなるため、製造より3~4ケ月が美味しく味わえる、おすすめの時期なのだそう。

使い方は料理に使ってよし、そのまま卵かけご飯、豆腐や納豆にも使える。もちろん、水で薄めればうどん出汁としても。500mlの1本で12~13杯のうどん出汁が作れる計算だそう。

最初はお店の前だけで出していた自動販売機だが、見た目の面白さと味の良さが話題になり、広島市内でも売って欲しいという要望が高まってきた。
「もっと多くの方に知っていただきたい、利便性向上などを考え平成24年10月よりうどん店以外にも設置を開始、さらに昨年末より県外への設置も強化し、現在広島に9ヶ所10台。名古屋、大阪、岡山、福岡に9台、さらにあごだしの本場、長崎にも設置しました」と、規模もどんどんと拡張中。


夏場、冷蔵庫に入っていた麦茶と間違えて、出汁を飲んでしまった。という経験は割とあったりする。でも、これならしっかり出汁と書かれているので間違えることは無さそうだ。それに、これからはひとり暮らしの増える春。料理の味を引き締める出汁を、自動販売機で気軽にどうぞ。
(のなかなおみ)