半信半疑で手にとった。
タイトルに『女子の人間関係』とある。
・会社の同僚がなにかと挑発的で、張り合ってくる。
・仲のよい友達の結婚が決まったけど、素直に喜べない。
・ママ友同士で集まると、その場にいない人の悪口大会になる。
・上から目線でアドバイスしてくる友人がいて苦痛。
実体験があるかどうかはともかく、どれもよく聞く女同士のトラブルだ。
女同士ってめんどくさいなーと思う反面、「女」でくくることへの抵抗感もある。
「女ってこうだよね」と、したり顔で言われると、反発心も生まれる。
著者である水島広子さんは精神科医。この本の冒頭でこう解説する。
“いわゆる「女」の嫌な部分を、本書ではカッコつきの「女」と書くことにします。これは女性そのものを意味するのではなく、いろいろな女性に見られる、一連の困った特徴を呼ぶと理解してください。
うまい。
「あなたがそうだ」と言っているわけではないし、「女だから」という理由で否定しているわけでもない。「いろいろな女性に見られる特徴」として取り出すことで、客観視もしやすくなる。
“「女」についてよく知っておくことは女性との関係をスムーズにする上でプラスになります。「女」の扱いを間違えてしまうとかなり面倒なことになってくるからです。”
水島さんは「女」の特徴が“虐待やいじめなどにより他人から傷つけられてきた人たちに見られる特徴と共通している”という点に注目する。
・いつも自分を否定されて育ってきた人は、自分の意見と違う意見を持っている人を見ると
「自分が否定された」と感じがち。
・人から虐待的な扱いを受けてきた人は、人を見たときにまず「自分の敵か味方か」を区別したがる傾向にある
・他人から傷つけられた人は「自分の領域」と「他人の領域」の区別がつきにくい
女性は長い間、“選ばれる性”であり、「女らしさ」を求められ、男子中心社会のなかでは「女のくせに」という立場におかれてきた。結果、“一つ一つの傷はそれほど深くないとしても、女性もやはりいろいろな場面で傷つけられてきている”と、水島さんは推察する。そして、“「これだから女は……」とさらに傷つけるのではなく、癒していくことが必要”だと説く。
正直言って、そんなことできるの? と思った。
だって、相手は意味不明の敵意をぶつけてきたり、足を引っ張ろうとしたり、「アンタに関係ないじゃーん」なお説教をしてくるような相手なわけでしょう。
でも、そんなふうに厄介に感じること自体が、すでに相手の「女」に巻き込まれているのだと、水島さんは指摘する。
“巻き込まれると一口に言っても、そこには二通りに巻き込まれ方があります。一つは行動面で物理的に巻き込まれてしまうこと。相手のせいで行動が変わってしまうことです。もう一つは、物理的には変化がなくても『嫌な気持ちになる』『ストレスを感じる』というもの。これは精神的に巻き込まれているということになります。”
では、どうすればいいのか。水島さんは具体例を挙げながら、解説していく。例えば、こんな具合だ。
「ほめられたとき、どう返せばいいかわからない」
女子同士で「かわいい」「モテるでしょ」とほめあいになったとき、どのように返すのが正解なのかがわからない。「はい、そうなんです」とも言いづらいし、強く否定したり、社交辞令的にほめかえすのも嘘っぽい……という悩み。
ほめられたなら喜んでおけばいいじゃないか、というのは早計。
のんきなお花畑かと思いきや、そこは銃弾飛び交う戦場だった。さあ、どうやって生還するか。
水島さんのアドバイスはこうだ。
“注目したいのは、相手がそう言ってくれた、というコミュニケーション。「そんなふうに言ってくれて本当にありがとう」とまずはお礼を言うとよいでしょう。”
ポイントは「かわいいか、かわいくないか」の軸を手放すこと。
“さらにだめ押しとしては「そんなふうに言ってくれて本当にありがとう」の後に、「○○ちゃんって本当に優しいね」と心から相手をほめておくとよいと思います。(中略)つまり、この話の全体を「自分がかわいいかどうか」の話ではなく、「人をほめてあげる彼女は優しい」という話にしてしまえば、かなり自分を守れることになるでしょう。”
ユリイカ!
以下、この本では「対抗心をむきだしにされた」「女同士の派閥争いに巻き込まれそう」「悩みやグチを言われるのが苦手」「男性にだけいい顔をする後輩に困っている」など、女子が直面しがちな悩みをひもとき、対策を紹介していく。
女同士のつきあいに悩む女性はもちろん、女性とどうもうまくコミュニケーションがとれないという男性にもおすすめ。おじさんの心にも「女」は棲んでいる。
(島影真奈美)