突然キレて人を傷つけたような事件において、よく聞くのが、「普段はおとなしかった」「目立たないタイプだった」などのフレーズ。事件になるような特殊なケースは除いても、「おとなしい人が突然キレる」というのは、けっこうよくある気もする。


ストレスを溜めに溜めて爆発してしまうのだろうと思うが、キレるのを防ぐためにはどうしたら良いのだろうか。怒りや不満を、その場でその都度、ちょこちょこ小さく解消していくことができれば良いが、性格的に難しいという人もいるだろう。
また、これまで我慢していたことも、一度怒りを表面に出したことによって、おさまりがつかなくなったり、かえって増幅してしまったりする場合もある。
何か良い方法はないものだろうか。 「ゆうメンタルクリニック」総院長の、ゆうきゆう先生に聞いた。

「キレてしまう人というのは、その場の出来事に対しての怒りだけではなく、怒りを蓄積させてしまっていることが多いようです」
これは家庭での話に置き換えてみると、分かりやすいそうだ。

「たとえば、普段黙々と家事をしているお母さんが、ある日靴を脱ぎ散らかしていることに対してとても怒ったという経験はないでしょうか。あるいは、食器を下げなかった、雨が降っているのに洗濯物を取り込んでいなかったなどの、日常にある些細なきっかけで、『普段は見過ごされたり、笑って許してくれたりするのに、その時はひどく怒られた』という経験です。そして、それがきっかけで脱ぎっぱなしにしていたコートや洗面所の使い方など、その場のことではない部分まで持ち出して怒るなんてパターン、見たことがないでしょうか?」
これは「たまたま機嫌が悪かった」というよりも、「普段はまあいいか」と抑えていたことが、積もり積もって噴出したケースであることが多いそうだ。

きっかけは、たとえば、「その5分前に近所の奥さんに嫌味を言われたけど、ぐっと我慢して家に帰ったら、子供や夫のことで怒り噴出」などのパターンが考えられると言う。
ベストは、「その場その場で自分の気持ちを冷静に伝えること」だと言うが、それはなかなか難しい面もあるようだ。

では、うまく気持ちを切り替えるにはどうしたら?
「切り替えポイントとしては、深呼吸をする・柏手を打つなど、体を使ったアプローチをしてみることです。
可能ならダッシュで100m走ってみるのもいいのですが、お仕事中などには難しいですよね。具体的に誰でも使える『鉄板』の行動はないですが、こっそりとトントントンと足踏みをしたり、歯をカチカチとかみ合わせるなど、怒りという感情(元となる認識)に向いた意識を体に向けることで、怒りはずいぶん和らいできます」

ただし、キレやすい人は普段から抑圧していることも多いので、気をそらすことが我慢になってしまうこともあるそう。
その場合、定期的に発散する時間を持ち、気持ちを開放することが大切だとか。

無意識に溜め込んでしまいがちなイライラ。自分ではストレスを感じていなくても、意識的に外に出す工夫をしてみるのも良いかも。
(田幸和歌子)

※ゆうきゆう
精神科医 著書多数。

ゆうメンタルクリニック総院長(上野院)。(池袋院)。(新宿院)。(渋谷院)。静かで癒される都会のオアシスとして評判が高い。