他方、ニクソン政権は国内政治ではめぼしい成果はないとされる。だが、前出の『ニクソンとキッシンジャー』によれば、彼の在任中の政策を細かく見ていくと、ケネディ~ジョンソンの民主党政権を引き継ぐかのような福祉や経済政策を実施する一方で、経済的自由や規制緩和をめざす、後年のネオリベラリズムの原型ともいうべき構想も見出せるようだ。
ニクソンはまた、ポピュリズム政治の先駆者でもあった。わかりやすい例としてはテレビの利用があげられる。ニクソンが外国を訪問するたび、スタッフらが繁華街に乗りこんで意図的に交通渋滞を起こし、群衆が歓迎のために集まっているかのような映像をニュースのためにつくりあげたことは、その一例だ(大嶽、前掲書)。
■意外!? 名文家の一面も
ポピュリズム政治家としてのニクソンはまた、既得権益を持つ東部エスタブリッシュメントを「敵」として、批判を続けた。だが、ニクソンは彼らに劣らない教養の持ち主でもあった。そのことは、最近文庫化された著書