ついに北欧の人々が愛する季節が到来! 1年のうち、暗くて寒い時期が長い北欧では、人々は春の訪れや夏の日差しを待ちわびている。
そんな北欧人は、温かく晴れた春夏の日には、ここぞとばかりに外に出て日光浴を楽しむ。
水着を着て寝そべる人たちが公園にあふれ、夏の公園はまるでビーチと化す。「水着はビーチやプールで着るもの」という固定観念をもっている日本人にとっては違和感満載の風景だが、私も北欧デンマークにしばらく住んでいるうちに、水着で公園に寝そべりたい気持ちがわかるようになってきた。まだ試したことはないけれど……。

北欧人が日光浴を楽しむのは、ただ気分的に太陽光に飢えているからだけではない。じつは、太陽光は私たち人間の体にとって大切なもの。北欧の人々は、それを意識的に、あるいは無意識的に知っているからこそ、躍起になって日光浴をするのだ。


太陽光と深い結びつきがあるのは、ビタミンDだ。私たちの体は、太陽光に当たることで、ビタミンDを生合成する。逆に、太陽光に当たらないと、ビタミンD欠乏症になってしまうリスクが増大する。
秋冬の日照時間が非常に短い北欧では、ビタミンD欠乏症が深刻な問題として認識されている。ビタミンDが不足すると、カルシウムやリンをうまく体に吸収することができず、骨がもろくなってしまうらしい。また、がん、心臓病、糖尿病、うつ病、短命なども、ビタミンD不足と無縁ではないという。


ちなみに、日本人を含む有色人種の肌は、白人の肌よりもビタミンDの生合成力が低いそうだ。そのため、有色人種はより積極的にビタミンDを摂取する必要がある。これは北欧では比較的よく知られている事実で、医者や看護師は、ビタミンDをサプリメントで補給すべきグループとして、乳幼児、室内活動が多い高齢者、有色人種を挙げている。私もデンマークに来てから、医者に勧められて、サプリメントでビタミンDを補給するようになった。また、デンマークでは、2歳までのほとんどの乳幼児がビタミンDを液状のサプリメントで補給している。しかし、これはあくまで補足であって、太陽光に当たってビタミンDを摂取することができれば、それがベストである。


そんなわけで、地球上には、ビタミンDを摂取するために太陽光を求めてやまない国民がいることも頭の片隅に置いておいてほしい。最近、日本では、紫外線を防ぐために太陽光を避ける傾向があるが、ある程度の紫外線は人間の体にとって重要である。とくに、有色人種である日本人は、白人以上に太陽光を浴びることが大切なのだ。実際、日本でも、極端に紫外線を避けることの弊害が指摘され、太陽光に当たることの重要性が見直されつつある。紫外線のネガティブな面のみを考えて太陽光を極端に避けるのではなく、適度に太陽光に当たって十分なビタミンDを吸収したいところである。

十分なビタミンDを吸収するのはむずかしいことではない。
週に2~3回、毎回5~30分だけでも、日焼け止めクリームを塗らずに日中の太陽光を浴びればそれでいいのだ。日焼け止めクリームを塗る時間と塗らない時間を日常生活にバランス良く取り入れるのは、健康的な感じがして、意外と楽しいかもしれない。なお、北欧に住む有色人種である私は、春夏の間はひたすら太陽に感謝し、来る秋冬の分まで太陽光を浴びてビタミンDを吸収したいと思っている。
(針貝有佳)