長野駅周辺の土産物屋で、先日、ちょっと妙な商品を見つけた。
黒板のイラストを描いた緑色パッケージに大きく書かれているのは「キムタクごはんの素」という文字。
ちょ、待てよ!

裏面を見ると、こんな説明がある。
「『キムタクごはん』とはキムチとたくあんを混ぜ合わせたご飯のことで、長野県塩尻市のオリジナル給食として小中学生の大人気メニューとなっています」

いったいいつ、どんなきっかけで作られた商品なのか。販売元の株式会社タイヨーに聞いた。

「『キムタクごはんの素』を発売したのは3年前です。もともと長野県は漬物が名産なのに、子供たちはあまり食べてくれないということで、塩尻市の管理栄養士さんが豚キムチに漬物を混ぜたことが始まりで、市内では2002年から給食として提供されるようになりました。これが美味しかったということで、お母さんに家で作ってもらう子などが出てきて、口コミで広まり、さらに県外から来る観光客にも知ってほしいと、塩尻市がご当地メニューとして押し出すようになったんです」

それにしても、どうしても気になるのはネーミング。
これって大丈夫なんですか?
「『キムタクごはん』という名前そのものは、管理栄養士さんが考えたもので、塩尻市のHPにも載っていますし、給食の献立表もこの名前ですし、いろんな方がご家庭のオリジナルレシピをブログなどに載せていますよ」
「キムタク」というと、どうしても特定の顔が浮かんでくるけれど……。
「特にクレームが入ったりすることはありません。最初申請した際には却下されたんですが、理由は芸能人の方のお名前の『キムタク』部分ではなく、『キムチたくあん』と明記しないと、誤解を招く可能性があるからということでした。たとえば、『キムチたくあんまぜごはんの素』なら良いということでしたが、それでは面白みがなくなってしまいますよね」
ただし、品名は『キムタクごはんの素』だが、「一応、逃げのため、よく見ていただくと、『キムタク』の間に小さく緑の字で『チ』と『アン』が書かれていて、『キムチタクアン』となっているんです」

実はこの「キムタクごはん」、TV番組の『秘密のケンミンSHOW』で紹介されたことがあり、それを観た人が家で作ってみて気に入り、今では定番料理になっている家庭もあるらしい。キムチとたくあん、豚などで簡単に作れるだけに、塩尻の給食から広く県外までも広まっているメニューなのだ。

実際、家庭でも作れるわけだが、この商品の特徴とは?
「小学校の給食をもとにしているので、薄味なことです。
美味しいという人もいますが、多いご意見は『薄い』『面白い』『珍しい』ですね」

「辛みを入れてほしい」という声などもあるそうだが、ご予定は?
「辛くしていく予定はありません(きっぱり)。学校給食の味ですから。もしやるとしたら、パッケージを変えて別の展開にすることは考えられますが、おそらくないと思います」

実際に食べてみると、確かに辛みはないが、たくあんのコリッとした食感がいいアクセントになっている。

商品名に一瞬ギョッとするが、その実、味は奇をてらったところのない、実に誠実な料理なのだった。
(田幸和歌子)