アキタのたまごといえば、味もさることながら、高い安全・安心がウリ。「日本唯一の完全直営一貫生産システム」を実現しており、飼料の配合からヒナのふ化、卵の出荷まで、すべての工程を自社でおこなっている。
そんな同社が、先ごろ満を持して発売したのが、今までにない“おいしさ”を追求した新商品「きよらグルメ仕立て」。実はこれ、単なるグルメたまごじゃない。なんと業界初となる、たまご専用アプリ「アキタたまごAR」(※無料、iPhone 4S以降 iOS 6以上/Android OS 4.0以上)に対応したたまごなのだ。
アプリの内容も非常にユニーク。「きよらグルメ仕立て」のパッケージにスマホのカメラを向けると、立体的に卵が浮かび上がってくる。タップすると中から動物が現れ、同じ動物をそろえると、ニワトリやヒヨコのキャラクターが出現。それらもタップすると、鳴いたり動いたりする。単純だが、キャラクターのコミカルな動きがおかしくて筆者の4歳の娘も夢中になっていた。筆者が遊んでも楽しいと感じるできだった。
しかし、生粋の老舗たまご会社がアプリ開発というのは、異例ともいえる試みだろう。
「当社ならではの一貫生産やトレーサビリティーを消費者伝えるためにはどうしたら良いか? と考えたのがスタートです。単にPC版でのトレーサビリティー画面をスマートフォン対応するだけなら簡単ですが、消費者はわざわざそのためにページを検索してくれるはずがありません。そこで考えたのが、アプリ開発です」
作るからにはダウンロードしてもらえるような面白いアプリでなければならない。
「当初はトレーサビリティーをニワトリ博士が教えてくれる、というような感じで考えていましたが、最終的にはまったく違う発想に切り替えました。パッケージをおもちゃに変身させることにしたんです!」
お母さんやお父さんが台所でご飯を作っているあいだに、子どもはパッケージで遊ぶ、というのが発想の原点。
「パッケージは、デザインなどに経費がかかっている割に、必ずゴミ箱にいきます。これをおもちゃ箱にいかそうと思いました。子供と同じ目線に立って、ワクワク感にとことんこだわっています」
あまりにもこだわったために、なんと山崎さんが自らラフデッサンを書いたそう。もちろんアプリには、当初の目的であるトレーサビリティーシステムも搭載。パッケージにある生産履歴番号を入力すれば、育てた人から飼料の原産国まで一目瞭然だ。
肝心の味も、ビックリするくらいおいしい。
そういえば、同商品の試食会はマンダリン オリエンタル 東京で、“卵尽くしのフルコース”という、ユニークな形で紹介された。しかもメニューを考案したのは、一流パティシエのステファン・ヴュー氏。クローズドな試食会のために、これほどこだわっている会社は他に見たことがないかも。
それでいて、決して高級品ではないのがうれしいところ。現在、関東・中部・近畿圏のダイエーにて先行販売中なのだが、価格も10個入り265円(税抜)と意外に庶民的。「たまごは日本人の食生活に欠かせないものだからこそ、リーズナブルな価格で安心なものを届けたい」という同社の思いが背景にある。
「第一次産業だから……と言い訳せず、イノベーションを起こしていきたい」
と新たな取り組みに意欲をみせる山崎さん。ちなみに次回のプロモーション戦略としては、妊活シンポジウムへの特別協賛が決定しているとのこと。今後の展開も楽しみにしたい。
(古屋江美子)