1999年の玄倉川水難事故である。
玄倉川水難事故は13名の死者が出た事故だ。神奈川県山北町玄倉川の中州でキャンプをしていたグループの避難が遅れ、救助が難航。テレビクルーの前で流されてしまった映像がメディアで何度も使用され、記憶に残っている。
では、今回のキャンプ場事故(以降、区別のために丹沢水難事故と称す)は「玄倉川水難事故の再来」なのか? ここ数日間の報道は、その答えをはっきり「ノー」と告げている。丹沢水難事故と玄倉川水難事故の違いを整理しよう。
■増水の直接的原因
どちらの事故も、川が大きく増水し、そのために流されてしまったものだ。しかし、増水の直接的な原因は異なっている。
丹沢水難事故は、事故発生の直前に起こったゲリラ豪雨のような突発的な激しい雷雨によって急激に増水。いわば鉄砲水が発生し、車を横転させたとみられている。水位はかなり上昇していたが、中州の一部は残っていた。
一方、玄倉川水難事故は、事故の数日前から、台風の影響で降雨量がひじょうに多い状態だった。さらに局地的豪雨が加わり、事故現場の上流にある玄倉ダムの保水量が限界に。ダムの決壊を防ぐために、管理者側はダムの放流を決定した。中州は残らなかった。