「ローストビーフ」と聞いてイメージするものは? 

「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」や「鎌倉山」などの老舗専門店やホテルのビュッフェなど、目の前でカットしてくれる店もあるが、一般的には、デパ地下やスーパーなどの薄いモノを思い浮かべる人が多いだろう。

ところが、近年、「厚切りローストビーフ」がじわじわときている。

ファミレスの「ビッグボーイダイニング」のほか、2012年には麻布十番にアレフが経営する「びっくりドンキー」の系列店「ハーフダイム」がオープン(札幌、川越などの既存店は同年10月までに閉店)。
さらに、今年4月には、デニーズが開店40周年を記念した『デニーズ アメリカンフェア』において、目玉メニューのひとつとして『アンガスサーロインのローストビーフ』を販売し、話題になった。それが大好評で、現在はグランドメニューとして定番商品になっているほか、冬のギフト商品としても登場している。

なぜ厚切りローストビーフを? 株式会社セブン&アイ・フードシステムズの企画室担当者に聞いた。
「デニーズの40周年企画として、復刻メニューとともに、ファミリーレストランでまだ扱っていないビッグメニューを提供したいと以前より考えておりました。アメリカと言えば一般的に牛肉、ステーキを思い浮かべる方が多いと思いますが、『牛肉』の更なる美味しさをお召し上がりいただけないか?と言う点からローストビーフに着目致しました」
「ホテルのビュッフェで一番人気」「長い列が作られるメニュー」「専門店でも人気あるメニュー」ということから、ローストビーフが高く評価されていること、市場も確認し、決めたメニューなのだ。

「また、サーロイン、特にアンガス牛のサーロインのローストビーフはなかなかお召し上がりいただく機会がないであろう高品質な商品である点にもこだわりました」(同担当者)

「厚切りにした理由」については、次のように説明する。
「素材の味と調理の美味しさをしっかりと味わっていただきたいと思いから、アンガス牛のサーロインという高品質の肉・部位で、ステーキのような厚切りの仕立てに致しました」

さらに、ファミレスのココスでも現在、オータムフェアとして「やわらかローストビーフ」を販売している。
「ココスはもともとアメリカカリフォルニア生まれのファミリーレストランです。ココス発祥の地であるアメリカのお料理を楽しんでいただくため、今年の秋は『アメリカンフェア』を開催し、フェアメニューのひとつとして『やわらかローストビーフ』の開発、販売に至りました」とゼンショーホールディングス」グループCC本部広報室担当者は言う。 
商品のポイントは、「厚切りにすることでアメリカンスタイルの商品に仕上げたこと」。
まず表面を強火で焼き、その後弱火でじっくり火を通すことでやわらかい商品に仕上がっている。


ちなみに、ローストビーフの薄切り・厚切りの違いについては、「薄切り=イギリススタイル、厚切り=アメリカンスタイル」というのが一般的な説だが、「大きな違いはない」という説もある。

ファミレスの高級志向の流れに加え、近年、ハワイやアメリカなどから続々上陸している「パンケーキ」や、アメリカ発の高級ポップコーン、さらにアメリカのセレブ達の間で流行したグリーンスムージーなどの人気の流れもあり、いま「アメリカン」な食べ物として「アメリカンな厚切りローストビーフ」が注目されているのかも。
(田幸和歌子)