1月29日、様々なジャンルのプロデューサーをゲストに迎えるトークイベント「Producer's Parade」(主催『P』)が、東京・渋谷で開催された。今回のゲストはカプコンのゲーム「戦国BASARA」(以下「BASARA」)シリーズの小林裕幸プロデューサー。


「BASARA」は、今年で10周年を迎える人気シリーズ。小林Pは企画の立ち上げから参加している。
「『売れるゲーム』を作るぞ! という気持ちで作ったのが『BASARA』です」
小林Pが「売れる」ために決めたコンセプトは3つ。

1.戦国時代が舞台


「BASARA」の舞台は戦国時代。有名な武将がこれでもかと出てくる。
「戦国時代は激動の時代。武将の生き様はすごく魅力的で、ドラマチックに描ける」
参加しているスタッフは、ほとんどみんな戦国時代のことを知らなかった。そのため、まず史実を勉強することから始めた。
「かといって、史実そのもののゲームを作るわけじゃない。あくまでもエンタメ。『BASARA』ならではの独自解釈を入れました」

2.誰でも遊べる爽快アクション


売れるためには、幅広い層が遊べるゲームにしなければならない。「BASARA」シリーズのメインターゲットは15〜39歳の男性だが、同年代の女性もサブターゲットにしている。
「アクションゲームの経験がない人でも一騎当千の爽快感が味わえる。原則ボタン1つでクリアできるけど、アクションの楽しさを感じられる設計にしました」
小林Pが参加している別タイトル「デビルメイクライ」シリーズは、アクション好きに向けた作品で難易度が高い。
「BASARA」シリーズはめいっぱいハードルを下げているので、ふだんアクションゲームをプレイしない層(たとえば、多くの女性ユーザー)にも届いた。

3.個性的なキャラクター


「カラーやシルエットは、史実のままだと黒くて地味になってしまう。あくまでもゲームなので、わかりやすさや動きの派手さ、面白さを重視しています」
面白さを重視するのは外見だけではない。
「BASARA」のキャラクターの性格は、基本的におかしい(褒め言葉)。最新作「戦国BASARA4 皇」には新キャラとして千利休が登場するが、彼は「二重人格の茶人サイキッカー」という設定。戦いを好まない「ワビ助」と、好戦的な「サビ助」という人格がいて、技ごとに人格が入れ替わる。
こういうことを大真面目にやるのが「BASARA」だ。
ライバルや師弟、主従など、人物相関図も意識してキャラを作っているのだとか。

そうして生まれた「戦国BASARA」シリーズ。1作目のプロモーションは正直成功とはいえなかったが……。
「いい意味でバカっぽいのがウケて、発売後にいろいろな媒体で取り上げてもらえました」
1の反響から、「BASARA」の評価されている部分(小林Pいわく「バカっぽい」部分や、「BASARA解釈」と言われるような部分)をつかみ、2のプロモーションは成功。大きな話題になった。

「でも、まさか10年やるとは思わなかった!」
売れるゲームを作ることはすごく難しいが、10年間売れ続けるのはもっともっと難しい。10年続けるために心掛けたことを小林Pが語る。
「『BASARA』は年に1本新しいゲームを出している。ストーリーややりこみ要素は充実させますが、1年間次のゲームを待っているお客さんの気持ちになると……」
娯楽があふれているなか、1年はかなり長い。ファンが離れていくのを防ぐために、「BASARA」はゲーム以外で多様な展開を見せている。
漫画、小説、CD、グッズ。ゲーム内の台詞をまとめた「セリフ本」もある。TVアニメや劇場版、舞台の展開もした。ファンイベント「BASARA祭」も年に数回行っている。
珍しいのは、武将ゆかりの地とさまざまなコラボをしていること。声優と一緒に行くバスツアーなんてものもある!
「戦国時代は好きになるといくらでも深められる。架空のキャラは情報がないですが、史実をもとにしたキャラだと調べれば調べるほど広がりがあるんです」
ゲームでは明確に描かれていないキャラの別側面を史実から妄想するのも楽しい。
「BASARAファン」から「戦国時代ファン」に進化(深化?)したら、1年なんてあっという間だ。
その積み重ねで、「BASARA」は10周年を迎えるタイトルに成長した。

「BASARA」は、他のアクションゲームと比べて、女性ファンが多いシリーズだ。私の周りにもBASARAファンは多い。小林Pに「女性人気は狙っていましたか?」と質問してみた。
「たまたまです! 『1』のころの女性ファンに聞いてみたら、友達やお兄さんがやっていて、偶然自分もプレイしてみた……という人も多かった。でも、女性の口コミはすごいですね。口コミだけじゃなくて、貸したり買って渡したりする。いい意味の『押しつけ力』があると思います」
確かに身の回りの女性を見ると、布教(物理)ってすごく多い。
「女性ファンは、意識することはありますが、狙ってはいません。女性ファンは、媚びたら逃げてしまう。女性ファンを向いた瞬間に、女性は逃げるんですよ。
少年漫画を好きな女子と同じ。女子を向いて『少女漫画』になったら、それは好きなものではなくなる」
わ……わかります!

(青柳美帆子)
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