《[引用者注――放送会館の]五階の音楽部で、大晦日の夜の大さわぎの企画をきく、僕の司会で、音楽人総動員の紅白試合とかいふ案、夜十時から十二時迄だそうだから、自動車で送って呉れるんでなくちゃ出ないと言ってやる》(『古川ロッパ昭和日記・戦後篇』)
白組のロッパに対し、紅組の司会には女優の水の江瀧子が、総合司会には田辺正晴アナウンサー(ドラマで演じるのは小松和重)が起用された。なお水の江は戦前に「西の宝塚、東の松竹」と呼ばれ人気を二分した松竹少女歌劇団の出身だが、今回のドラマで彼女に扮する大空祐飛は宝塚歌劇団出身である。
■ラジオで反響を呼んだ「リンゴの唄」
企画は無事に通ったとはいえ、放送までにはさまざまな難題も降りかかった。まず、出演者側から歌の優劣を競うということにクレームがついた。これに近藤は「いや、チームの勝敗は争うが、個人の優劣は審査しない」と説明、納得してもらうまで長い時間を費やしたという。審査員についても、プロの音楽家を起用するとコンクールになってしまうとの理由から、音楽に関しては素人の人たちに依頼した(「朝日新聞」1982年7月28日付夕刊)。