
119話は、こんな話
徹(大泉洋)に脅迫メールを送ったのは、彼の会社の元社員・山口(池田一真/しずる)だった。会社が倒産し、家族とも別れた山口は、徹に恨みをもっていたのだ。知らず知らずにひとを不幸にしていると知った徹は行方をくらます。
今日の、西村演出
一子(清水富美加)も帰ってきて、引き続き「家族のしあわせのかたち」を考える119話。
高志(渡辺大知)がメジャーデビューし、テレビ出演しているのをみんなで見ながら、一子の取材の流れで、しあわせについて思いを馳せる。
高志の歌「涙のふたり」は希(土屋太鳳)と圭太(山崎賢人)が結ばれた思い出の曲なので、ふたりはラブラブ(結婚指輪の左手を握り合うアップ)。
人生設計はシンプルに、「(愛するひとや家族と)いっしょにおることだけ」を大切にしたいと思う希。父母の姿を見て育っただけあるなあと思わせます。
「上を向いて歩こう」をみんなで楽しく歌う姿と、どん底の徹が交互に映る。
徐々に暗くなっていく徹の姿。差し色のようにちょっとだけ赤い光が映り込んでいるが、やがて完全に黒に。一瞬無音。そして、蝉の声。明るい陽光のなか、自転車をこいだり、小走りする藍子に、徹の手紙の声が重なる。
「おとうさんはひとりになります」
ずーん・・・。
編集テクニックの見本のように鮮やか。何度も繰り返し見たくなります。
西村演出は、歌を使って盛り上げる演出といえるほど、「あまちゃん」からずっとじつに洗練されたものを見せてくれていました。これまではたいてい気持ちが高揚するエピソードでしたが、今回は、堕ちる方向へ。みんなが幸せそうであればあるほど、徹の絶望が際立つというものに。
「上を向いて歩こう」も、30年前の日航機墜落事故で亡くなった坂本九の名曲、これしかないであろうという究極の選曲です。
それでも、つっこ「まれ」
「家族を奪い、人生を壊してきたことに気づきませんでした。」と激しく反省し、姿を消す徹。
深読みすれば、徹は、日本の駄目なとこの象徴で、誰かさんに、そうだそうだ、反省して! みんな苦しんでいるんだ! と言いたい気持ちを満たしてくれる存在なのかもしれないですよ。
そんな問題意識も勝手に感じつつ、西村演出も手伝ってドラマチックな展開なのですけども、徹よ、今頃、気づいたのか、とやや白けてしまうのも否めません。
ここにくるまでに、もう少し点を打っておいてほしかったかな。
突然、雷に打たれたように、真実を知る徹、っていうのをやりたいのだろうけれど、それにしても暢気過ぎたと思います。
しかも、家族を置いていなくなるの、何度目? って感じだし。
いや、いますよ、こういう何度も姿をくらますひと。でも、そういうひとは、やっぱり陽気に見えてどこか荒んでいます。徐々にくすぶっていくんですよ。
それから、藍子。そういえば、土地に馴染もうと塩田や塗師屋手伝っていたのは、もうすっかり馴染んだからやめてしまったのでしょうか。自立しようとしていたはずなのに、結局、支える係になってしまっていますよね。
どうやって生活維持できてるのかさっぱりわかんないんですよ、希の家族は。
CMのないNHKが、CMみたいに表面的にいい感じのドラマになっていませんか。
そこで、CM

高志のバンドlittle voiceは、渡辺大知のバンド・黒猫チェルシー。
(木俣冬)
エキレビ!にて月~土まで好評連載中! 木俣冬の日刊「まれ」ビュー全話分はこちらから
いまひとつ視聴率が伸びないが、奮闘は讃えたい。NHK朝ドラ「まれ」おさらい(54話までを総括))