ザ・クロマニヨンズの真島昌利、ヒックスヴィルの真城&中森による“ましまろ”の初アルバム/インタビュー

■1st Album『ましまろ』インタビュー(1/2)

「自分でもね、いいアルバムが出来たなって。聴いていて楽しいしね」(真島)

ザ・クロマニヨンズの真島昌利(Gt,Vo)が、ヒックスヴィルの真城めぐみ(Vo)、中森泰弘(Gt,Vo)と結成したのが、この“ましまろ”だ。1980年代の初頭、新宿JAM STUDIOで知り合い、その後も知人として交流を深めてきた3人が、ここに来て、まさかの新バンド結成! その結成の経緯や、9月2日にリリースする1stアルバムについて語る彼らは、和気あいあいと良い雰囲気で、新しいことを始める時のワクワクを心から楽しんでいるようだった。
(取材・文/大畑幸子、リード/編集部)

「真島と真城で“ましまろ”っていうバンドをやったら面白いんじゃないの?」

――マーシーさん(真島)、真城さん、中森さんの3人の出逢いは、80年代初頭の新宿JAM STUDIOだったそうですね。

真城めぐみ(以下、真城):ええ。その頃、マーシーがTHE BREAKERSというバンドをやっていて、そのバンドは非常に人気が高かったんですよ。

真島昌利(以下、真島):高かったのかなぁ……。

真城:高かったよぉ。私は高校の授業中にブレイカーズの歌詞をノートに書いたりしていたくらいだから。かなり聴き間違いが多かったけど(笑)。

――真城さんはファンだったんですね?

真城:そうなんですよ。好きなバンドだったのでよくライヴを観に行ったりしていたんです。そのうちに認識してもらうようになったんですけどね。

真島:当時、モッズとか……60年代のビートものが好きな人が集まるイベントとかね、そういう小さいシーンがあったんですけど、そこに僕らのバンドも声をかけてもらって出させてもらっていたんですよ。その小さい集まりの中でバンド同士とかお客さんも顔見知りになったりして、真城はその中の一人だったという。

中森泰弘(以下、中森):僕はもともとマーシーと地元が一緒で、マーシーの数人いる幼馴染と僕が友達だったんですよね。実際に逢ったのは子供の頃じゃないんですけど。その幼馴染の一人が雑誌の編集者で、その頃僕はカメラマンで一緒に仕事をしていたんです。彼が主催する新年会に行ったら、そこにマーシーがいたんですよ。

――あっ……だから、ましまろのアーティスト写真は中森さんが撮られているわけですね。

中森:そうなんですよ。それでさっき思い出したんだけど、その新年会にマーシーはカローラで来ていたんですよ。その時、思ったんだよね。あ、曲(「カローラに乗って」89年)になっているって。

真城:その当時乗っていた車をモチーフに、マーシーがソロで歌を作っていたんだと。ところで今、何気なくカメラマン・アピールしたね(笑)。

中森:あははは……そういうわけじゃないけど。そこは別にして、マーシーとはそういう繋がりですね。

――その後もマーシーさんとの交流は続いていたんですか?

真城:いえ、ほぼないと言っていいかもしれないですね。私はザ・ハイロウズ時代にレコーディングで1回だけコーラスに呼んでいただいたことがありましたけど、それも遥か昔の話で。イベントとかフェスとか、そういうところですれ違う程度のことはあったけど。中森さんの方が逢ってたんじゃない?

中森:そうかもね。

――その3人がどのようにして、ましまろの結成に至ったんですか?

真城:ミズちゃんっていう共通の友人がいるんですけど、その人がロカビリーバンドを始めて、彼のところに集まるようになったことがきっかけですね。

真島:5~6年前だったかなあ……彼がバンドを始めてね。ほら、バンドを始めたりすると、いろいろな友達に連絡して「ライヴを観に来てよ」なんて誘うじゃないですか。そういうノリで僕らも知り合いだったからそれぞれに呼ばれて観に行って、そこでお酒を飲んだりしてね。そういうことを繰り返しているうちに3年くらい前だったかなあ……彼が「真島と真城で“ましまろ”っていうバンドをやったら面白いんじゃないの?」って言い始めて。その時は「そうか? ワハハ……」なんて笑っていたんだけど、逢うたびに酔うたびにそれを言うんですよ、彼が。

真城:そういうふうに言ってくれるのはありがたかったけど、私はまずマーシーはやらないと思っていたんですよ、忙しいから。そしたらミズちゃんが「(マーシーは)やってもいいって言ってたよ」って。

――お互いに直接話をしていなかったんですか(笑)。

真城:ええ。人を通して(笑)。

真島:そうそう。それでようやく昨年の春にミズちゃんを交えてある店で逢ったんですよ。

真城:そこから具体的にどうする?みたいな話になって、じゃあ楽器を持って集まろうってことになったんですよね。集まった場所がミズちゃんちだったんですけど(笑)。

――お友達、大活躍ですね(笑)。

真城:(笑)。ちなみに、さっき話に出たアー写もミズちゃんの家の前で撮りました。で、話を戻すと、ミズちゃんの家に集まった時にマーシーはギターを持ってきて。

中森:曲もいっぱい持ってきてくれてね。

真城:そうなんですよ。マーシーが何曲か用意してくれたので、それをやろうってことになったんですよね。

真島:その曲たちはましまろ用に作ったというわけでもないんだけど。僕は家で暗~く一人で歌を作るしか趣味がないから(笑)。日々いろいろと作っていた曲の中で、これはましまろで歌ったら面白いんじゃないかなと思った曲をピックアップして持って行ったんですよ。

真城:暗めの曲とか可愛い曲とか、ちょっとコミカルな曲もあったりして。かなりバリエーションに富んでいましたね。

ザ・クロマニヨンズの真島昌利、ヒックスヴィルの真城&中森による“ましまろ”の初アルバム/インタビュー
ましまろ

コンセプトを決めてどうこうではなく、3人で楽しくやろうよって(真島)

――例えば、お酒を飲みながら、こういう感じだと面白いよね?みたいな、バンドの音楽的な方向性とかコンセプトみたいな話はしたんですか?

中森:ざっくりですけどね。例えば、ネオアコっぽいものも面白いねとかね。でも、マーシーってネオアコが好きだったの?って、僕自身、びっくりしたところがあったんだけど。

真城:そうだね。私とか中森さんはネオアコってそんなに遠くないんですけど、マーシーがやってみたいネオアコっていうものを何か形になるように私たちも手伝えたらいいなと。

真島:ネオアコはひとつの要素。だからコンセプトを決めてどうのこうのっていうよりも3人で楽しくやろうよっていう感じですね。

真城:だから、(ネオアコに)縛られることなく自分たちができることをやったという感じかな。

――発売中の1stシングル『ガランとしている』では、ゲストミュージシャンにOKAMOTO'Sのハマ・オカモトさん(Ba)と、黒猫チェルシーの岡本啓佑さん(Dr)といった若手の2人が参加していますね。世代を超えたサウンドを楽しめました。

真島:僕らぐらいの年齢になると、同い年ぐらいのミュージシャンを呼びそうな傾向にあるじゃないですか。そこをエンジニアさんが「若手と演った方が絶対に面白いよ」ってビシっと言ってくれて。で、僕らも「はい、わかりました」と。それでハマ君と啓君とやったら面白いんじゃないかってことで推薦してくれたんだよね。

真城:私たちとしてもその方がいいと思ったしね。彼らは何といってもエネルギッシュだし。

――ハマ・オカモトさんも岡本啓佑さんも音楽的な引き出しが多い人たちですから、そういう意味では、ましまろがやろうとしているサウンドを理解するのも早かったんじゃないかなと……。

真城:ええ。そこは信頼していたので。私たちのやりたいことはわかってくれるはずだって。

――そもそも彼ら2人とは面識があったんですか?

真城:私は知り合いでした。

真島:僕はハマ君のことは知っていたけど、啓君は初対面。

中森:僕も啓ちゃんは初めてだったなあ。そういえば、レコーディング前のリハーサルの時だっけ? 初対面の時にマーシーが具合悪くなっちゃったんだよね。

真島:そうそう。前日にお寿司を食べたんだけど、全部食べられなくて海老だけを残して冷蔵庫に入れて翌日の昼にその海老を食べてリハに行ったんだよ。最初だから僕も気を遣って明るく楽しい感じの現場にしようとしてさ、「イェーイ! よろしくねぇ~!」なんて笑顔で振る舞っていたんだけど、だんだん気持ちが悪くなってきちゃったんだよね(笑)。完全に海老の毒が回ってきてね……無口になってきちゃって。いつのまにかみんなと離れたところに座ってた(笑)。

――それって皆さんは理由がわからないから、どうしたんだろ?って心配しますよね。

真城:私たちはワーワー喋っていたんだけど、知らない間に一人離れて座っていてね。その時、マーシーったら、気持ち悪いってことを一言も口にしなかったんですよ。だから後からそのことを訊いて、ホントに男だなって思いましたもん。だけど、その時に現場にいた若い2人はそうとは知らないわけだから、もしかしたら俺たち何か良くなかったのかなって思ったかもしれませんね。

真島:だからね、逆に気を遣わせちゃったかなって。僕としてはあの時、スタジオが終わったら、みんなと楽しく飲みに行こうと考えていたんだけど、飲みに行くどころじゃないから、もう気持ち悪くて。終わった途端に「じゃあ!」って言って帰っちゃったんだけど。だから本当に悪いことしちゃったなあって。実はそれが今もずっと気掛かりなんですよ。未だに彼らとちゃんと話すチャンスがないから。

ましまろらしく自然体なノリでツアーも? 「うん。ゆるーーい感じでね」(真島)

――アルバムのお話を伺いますが、その1stシングル『ガランとしてる』に収録された「ガランとしてる」「しおからとんぼ」を含めた1stアルバム『ましまろ』は、先ほども話が出たようにバリエーションに富んでいますね。

中森:そうですね。さっきも話したネオアコっぽい曲もあれば、60’sっぽい曲もあれば……。

――スペクター・サウンドっぽい曲もあるし。

真島:そうそう。

――マーシーさんの詞曲の他に中森さんも1曲書いていますよね。詞曲を作る際にマーシーさんが作ってきたものに合わせて同じような匂いのする楽曲を作ろうという感じでした?

中森:ですね。だから、楽しかったんですよ。歌詞も曲も。そういう作り方をあまりしないしね。どこかノスタルジーを感じさせるものっていうのかな、そういうことは意識しました。

真島:中森君には「曲をもっと作りなよ」ってずっと言ってるんですけどね。

中森:あははは……。

真城:泉が枯れたって言ってたよね(笑)。

真島:えぇぇぇ~1曲で?(笑)

中森:力尽きたという……(笑)。でも、今度作ってみますかね。

――レコーディングで改めて気づいたことってありますか?

真城:マーシーは決断が早い!! 

中森:スタジオにも一番早く来るしね。

真島:うん。スタジオ大好きだから。

真城:マーシーに私たちが待たされたことは一回もなかったですね。何でもサクサクっと気持ちいいくらい進むんですよ。すごくやりやすかった。

真島:ダラダラやって良くなっていくことなんかないんですよね。それはもう経験上わかるんですよ。何度も何度もやっていくと行き詰ってきたりするわけ。それで2回ぐらい前のテイクの方が良くなかった?なんて話になると、最悪。ドツボにハマっていくんですよ。

真城:そうそう。無駄なエネルギーを使うだけですもんね。

真島:だから今回は、だいたい1回~2回、多くても3回ぐらいやって終わりって感じでしたね。

――歌入れに関しては?

真城:歌入れも早かったと思いますね。実は最初の頃、せっかくだから、“ましまろはこういう感じでやってみよう”って自分なりにちょっとだけ思っていたイメージがあったんですけど、歌っていくうちにそうじゃないなと思い始めて……。もう少しマーシーに近いものだったり、そういうふうにした方がいいのかなって自分なりに思ったんですね。初めて歌う感じの曲も多かったし、それぞれの表情が出たらいいなと思いながら、結果的にいろいろな歌い方になってしまったんですけど。

――アルバムで新たにトライしたことは?

真城:マーシーがアコギしか弾いていないことですね。マーシーがアコギに徹して、中森さんがエレキギターばっかり弾いているっていうのも珍しいっていう。

――たしかに! それにしても本当に本作は何度聴いてもやんわりと心地いい風を運んでくれます。

真島:自分でもね、いいアルバムが出来たなって。聴いていて楽しいしね。

中森:ホントに何回聴いてもいいんですよねぇ。

真城:そうそう。ずっと聴いていても疲れないんですよね。だからおすすめのアルバムですよ。

――9月17日から『ほーぼーツアー2015』がスタートしますが、タイトルの“ほーぼー”はダブル・ミーニングですよね? 

真城:そうです。ツアータイトルをつけたのはマーシー。

真島:1920年代~1930年代のアメリカの放浪者の意味と、いろいろなところに行くって意味の“方々”をかけたんだよね。

――ましまろらしく自然体なノリでツアーも進んでいくんでしょうね。

真島:うん。ゆるーーい感じでね。

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≪動画コメント≫


≪リリース情報≫
1st Album
『ましまろ』
2015.09.02リリース

【CD】
BVCL-668 / ¥2,913(税抜)
【完全生産限定アナログ盤】
BVJL-14 / ¥3,241(税抜)

[収録曲]
1. 体温
2. したたるさよなら
3. はだしになったら
4. いつかどこかできっとまた
5. ぼくと山ちゃん
6. ガランとしてる
7. ずっと
8. 水色の風船
9. しおからとんぼ(シトロンソーダ Ver.)
10. 山の師匠

≪ツアー情報≫
【ましまろ ほーぼーツアー2015】
2015年9月17日(木)大阪・umeda AKASO
2015年9月18日(金)愛知・ボトムライン
2015年9月22日(火・祝)広島・CLUB QUATTRO
2015年9月23日(水・祝)福岡・Gate's7
2015年9月26日(土)東京・東京キネマ倶楽部
2015年9月27日(日)東京・東京キネマ倶楽部
2015年10月2日(金)宮城・仙台darwin
2015年10月4日(日)北海道・cube garden

≪関連リンク≫
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