
■Mr.Children Stadium Tour 2015 未完
2015.09.06(SUN) at 日産スタジアム
(※画像9点)
観客の耳が“人見知り”することない新曲と、懐古とは無縁の代表曲
後半、雨が強くなり、メンバーが花道からセンター・ステージへと進み出て演奏するシーンでは、フィールドの観客とともにずぶ濡れの熱演となった。でも、僕が観た日がどんな天候だったとしても、大きな感動が待ち受けていたはずだ。



想像することの大切さを説く冒頭のムービーは、プログラムが進むにつれ「伏線だったのかな?」と思えた。「擬態」にしろ「I Can Make It」にしろ、「and I love you」、「進化論」、「幻聴」にしろ、そこから始まる何かを伝えているのだ。でも今回のセットリストは、がちがちにコンセプチャルというわけではない。
1曲目が「未完」であることは効果的だったし、客席にいて、いきなりこちらもスイッチが入った。ドームやスタジアムという広い場所ではシンプルな演出こそが届くけど、スクリーン映像でハンドクラップを誘った「ニシエヒガシエ」や「運命」は、そのあたり実に明瞭で、難なくステージと観客の絆を深めた。でも「運命」。ここの最近の桜井にしてはとっても“純”な恋愛ソングだ。ひとつ手前では「CHILDREN'S WORLD」という、最初期の作品を珍しくも演奏していたが、ここは“純”つながりってことで、いい流れを生んでいた。
「FIGHT CLUB」が疾風(はやて)のように駆け抜け、続く「斜陽」は大地を確かに踏みしめてく感じのリズムのノリ……。田原と中川と鈴木、キーボードのサニーの奏でる雄弁な音の会話。



それにしても桜井の身体能力というか“歌唱体力”とでも表すべきか、それは驚くほど充実していた。「フェイク」の“ゥオーゥオ”と観客と声を合わせる場面など、鳥肌が立つほどの一体感。「みんなにも歌って欲しい」と「終わりなき旅」もやったが、こちらは一人一人が歌うことで、生きていることの意味、どこかに自分を必要としている人がいるのだという予感を深めていく感覚でもあり、ただ唱和するだけの快感とも違っていた。
「幻聴」がそうだしアンコールの「fantasy」もそうだが、新しい曲なのにもう何年もやってる作品のような馴染み方のものが多いのも彼らの凄さだ。特に本編最後を「幻聴」「足音 ~Be_Strong」で見事に賄えるというのは凄いこと。真の意味で楽曲がPOPとしての整合性を有し、同時に歌詞のなかに聞くべき内容が含まれていてこそ、このことが実現する。そしてアンコール1曲目の「I wanna be there」。観客がスマートフォンのライトを灯しつつ、その腕を左右に振ってのワイパーが、去りゆく夏をしっかり心に刻む光景に。
最後に一番感動した曲のこと。それは「ALIVE」。ランニング・マシンのような仕掛けがステージ上手側に施され、歩めど空回りし、同じ場所に留まる桜井。
(取材・文/小貫信昭)


≪セットリスト≫
1. 未完
2. 擬態
3. ニシエヒガシエ
4. 光の射す方へ
5. CHILDREN'S WORLD
6. 運命
7. FIGHT CLUB
8. 斜陽
9. I Can Make It
10. 忘れ得ぬ人
11. and I love you
12. タガタメ
13. 蜘蛛の糸
14. REM
15. WALTZ
16. フェイク
17. ALIVE
18. 進化論
19. 終わりなき旅
20. 幻聴
21. 足音 ~Be Strong
<アンコール>
1. I wanna be there
2. overture~蘇生
3. fantasy
4. Tomorrow never knows
5. innocent world
6. Starting Over
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