
34話は、こんな話
はつ(宮崎あおい/崎の大は立)がややこを生んだ。
時代は明治4年になり、藩から県に、日本が変わっていく。
政府には頼れそうにもない。生き残るため独自に商いの道を考えるあさは、筑前の炭坑を買おうと決意。だがそうすると、旦那さまのお世話ができない。
あさは妾をかこってくれと新次郎に頼む。
いけずといけずじゃないの間に立つ姑
はつが無事に子供を生んだとき、「かいらしやろうなあ」「かいらしやろなあ」と繰り返すあさと新次郎が、かいらしい。
赤ちゃんを生んですぐ歩いているはつは、たくましい。
赤ちゃん誕生でハッピーにはじまった34話だが、よの(風吹ジュン)が、その子が加野屋の子であったら・・・と願望をつい口にしたのをあさが聞いてしまう。
焦ったよのは「正直な心が口から出た」と自分が決していけずで言っているわけではないと弁解するが、正直になんでも言っちゃうと人間関係はトラブるもので。そこをわかっていないよのは、やっぱりトラブルメーカー要員だ。
よかれと思って、いろんなものをくれたり世話してくれたりするお姑さんに関する愚痴はネットやテレビの嫁姑問題でもよく見かける。
「あさが来た」では、姑=悪 主人公(嫁)=善というベタな二項対立にはしないで、それぞれの立場の違いが人間関係をぎくしゃくさせてしまう様を書いている。
誰も悪くないからこそ余計にやりきれない
結果、追いつめられたあさが、妾をもってくれと新次郎に頼む展開には胸が痛む。
寝間着を着て髪をおろした姿を鏡に映すあさは、男のようと周囲に言われているあさではなく、女の顔だ。
類型的な男勝りキャラでなく、別の側面をちゃんともっている揺れ動きを15分のなかでちゃんと書いている。
そもそも闊達に外に出て仕事をするのが男らしく、家を守るのは女らしいと分断してしまうことがナンセンスだが、そういう時代だったのだから仕方ない。
主題歌の歌詞に「ずっと見てる夢は 私がもう一人いて やりたいこと好きなように 自由にできる夢」とあるように、あさが商いもやりたい、でも新次郎の嫁として子供ももちたい というふたつの夢をどう両立できるか悩んでいる姿は多くの女性の共感を呼ぶだろう。
(木俣冬)
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