朝ドラ「あさが来た」(NHK 月〜土 朝8時〜)11月6日(金)放送。第6週「妻の決心、夫の決意」第35話より。
原案:古川智映子 脚本:大森美香 演出:佐々木善春
玉木宏のチラ見せ美脚に釘付け「あさが来た」35話
NHKドラマガイド「連続テレビ小説 あさが来た」Part1 NHK出版

35話は、こんな話


妾をかこってくれと申し出られた新次郎(玉木宏)は、あさ(波瑠)がいいならと応え、自分から言いだしたものの、あさの気持ちは千々に乱れる。
いよいよ妾が近所に引っ越してくるという日、雨が降ってきて・・・。

か弱い旦那さまが好き


10月16日(木)放送の17話に次ぐ名作回。
はつ(宮崎あおい)と惣兵衛(柄本佑)の子供・藍之助があっという間に大きくなっていて、びっくりぽん。
子供の成長と平行して、はつが日に日にたくましくなっていく姿には目を見張るばかり。
九州には「オトコマエの炭坑夫がいる」からというユーモラスで強かな励ましは、あさでなくても、びっくりぽん。
その話からしばしふたりは楽しく不遇を笑い飛ばすが、やっぱり寂しい。
「あさが来た」が開始されて以来、折りにつけ、姉妹が手をつなぎ慰め合う場面。そこがこのドラマの魅力のひとつだと思う。
お家のために一番大事な仕事ができなかった“とは子供をつくることができないということなのだろうが、まだ若いのに、そんなに自分を責めなくてもいいのに。それも時代の違いだろうか。この頃の女はほんとうに大変だ。
苦悩するあさに追い打ちをかけるように、友厚に改名した五代(ディーン・フジオカ)が、旦那さまに対する思いを試すようなことを言って挑発する。でも逆にあさは、新次郎の遊びを「大阪商人の粋」と言いきり、「うちは、オトコマエの力自慢よりふらふらしているか弱い旦那さまが好きなんだす!」と毅然としてみせた。


「はあ・・・そうきはりましたか」という五代の懲りなさも愉快。

旦那さまのおみ足


そして妾が引っ越してくるという日。13話の結婚式回の新次郎のジンクス(楽しみごとがあると雨が振る)が再び生きる。
あさが大きな瞳の左から涙を流すと、雨が右目の下にポツリ。この念の入れよう! そして大雨ざあざあ。ベタ過ぎるほどベタな心情表現のあと、出ていってしまったあさを、傘もささずに着物の裾をからげて、ふくらはぎ、膝、腿のラインをチラ見せしながら走る玉木宏(悪いけど全然か弱くない!!)。花道走る歌舞伎俳優みたい! この一連の流れは、ザッツ大衆芸能としてありだと思う。
「やっぱりいやや、うちだけお嫁さんにしといといてくれなはれ」と懇願するあさ。
「あさほど心のなかが女らしいおなご、わては知らん」とあさを理解する新次郎。
朝からこんなにキュンキュンさせるとは罪深いドラマと、喜んだり憤慨したりしつつ、重要なのは、あさが行った偉業は商いだけではないことがここでわかること。
モデルの広岡浅子の夫は妾をもっているが、ドラマはその史実を(いまのところは)取り入れてない。
例えば、近い時代を描いている大河ドラマ「花燃ゆ」では、主人公の美和の夫・久坂玄瑞も高杉晋作も伊藤博文も愛人をもち、残された女たちは少なからず傷ついていることをリアルに描いている。
だが「あさが来た」では、ドリームなラブストーリーの体で、男が妾をもつ常識を打ち砕く。
かといって、時代にもの申す!と言うゴリゴリな感じでなく、「なんで今日は雨が降ったんだすやろ」というあさのかいらしいおとぼけで、柔らかくストーリーを包む。さすが月9も書いている大森美香。3歳児の子育てをしながら、脚本執筆しているそうで、やりたいことの両立を地でいきながら、これだけのクオリティーをたたき出す作家の力が、朝の元気になる。
(木俣冬)

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