10年近く掛けてようやくブレイクしたミスター・ビーン
日本初上陸は1990年。NHKの深夜の時間帯にひっそりと不定期放送が始まっている。主役のミスター・ビーンを演じるローワン・アトキンソンの知名度は低く、これといった宣伝もなしで、忘れた頃にたまに放送されることの繰り返し。NHKも特に力を入れていなかったようだ。
しかし放送を重ねるに連れ、その面白さにハマる人が続出。「偶然見つけた海外のコメディ番組」の話題は、ネットも普及していなかった時代に口コミでじわじわ広がって行く。通好みのコメディが一気に大衆化するきっかけは映画化。1997年の夏、本国イギリスで映画『ビーン』が公開されたのだ。
これが後押しとなり、日本でもようやく待望のビデオリリース、大晦日にはNHKでシリーズ一挙放送の特番が組まれる。さらに翌98年には映画『ビーン』の日本公開に合わせてローワン・アトキンソンも来日し、映画を盛り上げた。
NHKの再放送も高視聴率、ビデオシリーズも100万本に迫る勢い、映画も大ヒットと、90年代末にビーン人気は頂点を迎えることとなった。誰もが知るコメディとなるまでに実に10年、まさに90年代と共に生きた「爆笑を呼ぶ男」ミスター・ビーンの秘密に迫ることにしよう。
知られざるミスター・ビーンのプロフィール
■ヘアスタイル
ペタっと撫で付けた髪型のモデルはチャールズ皇太子。
ちなみに石頭の持ち主で、「女王陛下」を頭突き一発で(誤って)KOしたこともある。こういったイギリス流ブラックジョークも『ミスター・ビーン』の真骨頂!
■ファッション
肘当て付きのツイード・ジャケット、アクリル製のズボンは共に寸詰まり、垂れ下がり過ぎの細長いネクタイをいつも締めている。身長180cmとスタイルはいいのに残念な仕上がりだ。
ジャケットの内ポケットはまるで「四次元ポケット」で、ドライバー、鉛筆削り、果ては生きている金魚が出て来たこともある。
■性格
精神年齢9歳で非常にわがまま。自身をマッチョマンだと思い込んでおり、変な体操で筋トレにも励む。マッチョ信仰は強く、掛け布団のカバーは、『特攻野郎Aチーム』や『ロッキー3』に登場する黒人マッチョマン・Mr.Tで、ボディビルダーのポスターも飾っている。
ガールフレンドがいるが、女性の裸が苦手なシャイボーイ(?)。
■愛車
ミニを愛用。序盤はオレンジ、その後はイエロー(ライムグリーン)のミニに乗っている。
■親友
ビーンの同居人の大親友……というクマのぬいぐるみ「テディ」。クリスマスプレゼントを貰うこともあれば、首をちょん切られることもあり、マンガを読んで貰うこともあれば、ペンキを塗る刷毛にされることもある。アメとムチの使い分けが激しすぎるが、ビーンにとってはかけがえのない存在なのだ。テディベアはイギリス人にとって非常に馴染み深いぬいぐるみであり、欠かせない小道具ともいえる。
2007年に全英公開された映画第2弾『Mr.ビーン カンヌで大迷惑!?』は世界各国でも初登場1位を記録、翌年の日本公開時も初登場4位を記録し、ビーン人気健在を印象付けた。2012年のロンドンオリンピックの開会式で見せた勇姿(?)をご記憶の方も多いはずだ。
しかし、これを最後にローワン・アトキンソンは『ミスター・ビーン』卒業を宣言してしまった。「50代の男があんなふうに幼稚なキャラクターをやっているのは切ないことだよ」と、ローワンは語っている。その決意は固いようだ。
残念だが、『ミスター・ビーン』は90年代の良き思い出としてしまっておくことにしよう。
そして、ローワンの5歳年上の志村けん(現在65歳)が未だに「バカ殿様」を演じ続けていることの偉大さを痛感せずにはいられないのであった……。
(バーグマン田形)
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