チャットモンチー デビュー10周年「いろいろありましたけど…」。7年半ぶりの日本武道館公演
撮影/古溪一道

■チャットモンチー/【チャットモンチーのすごい10周年 in 日本武道館!!!!】ライブレポート
2015.11.11(WED)at 日本武道館
(※画像11点)

「これからも一緒にドライブを楽しみましょう!」

今年10月にデビュー10周年を迎えたチャットモンチーが、7年半ぶりとなる日本武道館公演【チャットモンチーのすごい10周年 in 日本武道館!!!!】を開催した。予定時刻から15分押しで場内が暗転すると、サポートメンバーである男陣の恒岡章(Dr)と下村亮介(Key&G)、乙女団の世武裕子(P)、北野愛子(Dr)の4名がブラックで統一した衣装でステージに上がった。
ツインドラムによるバスドラのテンポに合わせて、観客は手拍子を始めた。すると、ステージ中央から、10周年ロゴと同じく、体育座りで向き合い、大きな風船を持った橋本絵莉子と福岡晃子がステージ下からせり上がりで登場。予想外の登場に大きな拍手で迎えられるとともに、巨大風船が割れ、その中からカラフルな小さな風船が舞い上がり、“すごい”ライブが始まった。

チャットモンチー デビュー10周年「いろいろありましたけど…」。7年半ぶりの日本武道館公演
撮影/古溪一道

チャットモンチー デビュー10周年「いろいろありましたけど…」。7年半ぶりの日本武道館公演
撮影/古溪一道

1曲目は10年前の11月にリリースされたメジャーデビュー・ミニアルバム『chatmonchy has come』からの代表曲「ハノナノユメ」だった。デビューから2年4ヶ月という、女性ロックバンド史上最短期間での開催という記録(※当時)を獲得した7年半前の武道館2デイズ公演「すごい2日間」と同じオープニングナンバー。<地球のすみっこ>で二本足で立っていた女の子は、やがて「8cmのピンヒール」を履いて日本の音楽シーンを駆け抜け、ライブバンドが目指す頂点とも言える場所で、9千人の観衆とともに<幸せだって叫んでくれよ!>と叫んだ。
「シャングリラ」がどこにあるのかはわからないが、音楽の楽しさと幸福感に満ちたこの瞬間だけは、理想郷が立ち現れていたと思う。

チャットモンチー デビュー10周年「いろいろありましたけど…」。7年半ぶりの日本武道館公演
撮影/古溪一道

チャットモンチー デビュー10周年「いろいろありましたけど…」。7年半ぶりの日本武道館公演
撮影/古溪一道

「今日は10周年の武道館なので、皆さんと一緒にチャットモンチーの10年間を振り返りたいと思いますが、よろしいでしょうか」(福岡)

福岡のMCを皮切りに、改めて10年前へと時が戻され、3ピース時代を振り返る。上京し、一人暮らしを始めた心境を綴った「親知らず」を今では自身も親になった橋本が歌う。<幸せの意味を誰かとわかりあえるだろうか>というフレーズには時を経た感慨深さがあった。さらに、リリース当時、バンド史上最速のテンポを誇った「湯気」を恒岡と、正体不明の感情が掻き立てられる「染まるよ」「東京ハチミツオーケストラ」の2曲は北野と、男女ドラマーをそれぞれ加えた2種類の3ピースで演奏。そして、当日の会場入りまでの車中の会話を収めた“録音MC”を経て、2011年10月からの2ピース時代へと突入。
ここで、現時点でのバンド史上最速ビートの「きらきらひかれ」が誕生しているのも、苦境も、新たな楽しみを得るチャンスとして乗り越えてきた彼女たちならではだろう。福岡がベースとドラム、橋本がギターとドラム、キーボートとそれぞれが楽曲によって担当楽器を変える特異でユニークな編成での演奏に、客席からは「えっちゃん、カッコいい!」という声が上がった。「やっぱり? ありがとう」と笑顔で応えた橋本は当時を振り返り、こう語った。

チャットモンチー デビュー10周年「いろいろありましたけど…」。7年半ぶりの日本武道館公演
撮影/古溪一道

チャットモンチー デビュー10周年「いろいろありましたけど…」。7年半ぶりの日本武道館公演
撮影/古溪一道

「10年、いろいろありましたけど、なかでも二人になったということが、一番のポイントというかいろいろ考えた時期で。あっこちゃんが、『私、ドラムやるわ』って、初めて私に言った場所が羽田空港だったんですね。広いロビーで、私、びっくりして、すっごい大きい声を出してしまって。
いろんな人に見られて恥ずかしかったけど、今ではいい思い出です」(橋本)

「ドラムが抜けて、どうする?ってなってたんですけど、二人でやってみようって決めてからできた曲もあって。まだ十年ぽっちなんですけど、やってるとね、音楽って大変なんやなって思うことも、ちょっとだけあって……。でも、ここにきてみて、やっぱり音楽ってめっちゃ楽しいやんって思いました」(福岡)

チャットモンチー デビュー10周年「いろいろありましたけど…」。7年半ぶりの日本武道館公演
撮影/古溪一道

チャットモンチー デビュー10周年「いろいろありましたけど…」。7年半ぶりの日本武道館公演
撮影/古溪一道

二人だけど「ふたりじゃない」ことに気づいた『変身』ツアーを経て、彼女たちはまず、2014年8月に男性サポート2名を迎え、翌年1月には女性サポート2名を迎えた4人体制での活動をスタートさせた。この日は先に乙女団が重く激しいサウンドで心の内に秘めた感情を表現し、男陣はスピード感あふれるアグレッシヴな演奏で場内の熱気を上げた。最後はオープニングと同じく、6人編成に戻っての演奏。3ピース時代の「風吹けば恋」は、ツインドラムの動きが完全にシンクロ。
当時、例えばシンバルを叩く位置1つでも細かく決まっていたのだということを改めて知らされたと同時に、ピアノによるトリルのような細かいフレーズが入ることで、新しいサウンドへと生まれ変わってもいた。本編のラストは、最新アルバム『共鳴』の1曲目「きみがその気なら」。明るくなった場内に集まった<スリムでタフな乙女たち/男たち>に向けて、<この地球(ほし)で生き残るのだ!>という力強いメッセージを投げかけ、1時間半強の“すごい”ライブの本編は幕を閉じた。

チャットモンチー デビュー10周年「いろいろありましたけど…」。7年半ぶりの日本武道館公演
撮影/古溪一道

チャットモンチー デビュー10周年「いろいろありましたけど…」。7年半ぶりの日本武道館公演
撮影/古溪一道

記念すべき10周年で、7年半ぶりの日本武道館でありながらも、過去の映像を流すなどのセンチメンタルな演出は皆無だった。それは、彼女たちが過去を振り返るよりも、いつだって、「今が一番楽しい」と言える活動を続けてきた証しでもあるだろう。アンコールでは二人で、まだ曲名もアレンジも固まっていない新曲のラブソングを披露し、最後に再び6人で、天気が良すぎて涙が出てくるような「ドライブ」をプレイ。
天井から、ゆっくりと落ちてくるハート型のメッセージカードを眺めながら、彼女たちの未来に思いを馳せた。10年前、まさか二人になるとは思ってもみなかったのだから、10年先がどうなっているかは誰にも予想はつかないだろう。しかし、「これからも一緒にドライブを楽しみましょう」(福岡)という約束をのせたチャットモンチーのドライブは、きっとどこまでも続いていくはずだと確信している。
(取材・文/永堀アツオ)

≪セットリスト≫
1. ハナノユメ
2. 8cmのピンヒール
3. シャングリラ
4. 親知らず
5. 湯気
6. 染まるよ
7. 東京ハチミツオーケストラ
8. 変身
9. きらきらひかれ
10. ウタタネ
11. ときめき
12. 毒の花
13. Last Love Letter
14. 真夜中遊園地
15. こころとあたま
16. 満月に吠えろ
17. 風吹けば恋
18. きみがその気なら
<アンコール>
1. 新曲
2. ドライブ

≪ライブ情報≫
【チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2016~みな、おいでなしてよ!~】
公演日:2016/02/27(土)、02/28(日)
会場:徳島県 アスティとくしま
開場:12:00
開演:13:00
料金(税込):¥9,720 (税込) ※2日間通し券の販売はございません。
出演者:
27日 チャットモンチー、吉本新喜劇、小藪千豊、ASIAN KUNG-FU GENERATION、Base Ball Bear、レキシ and more
28日 チャットモンチー、吉本新喜劇、小藪千豊、四星球、MONGOL800 and more
発売日:2015.11.23(月)

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