「新・牡丹と薔薇」(東海テレビ、フジテレビ 毎週 月〜金 ひる1時25分〜)12月2日(水)放送。第3話「咲き誇る薔薇園の恋!!」より
脚本:中島丈博 演出:西本淳一ほか
平凡な名前に容赦ない「新・牡丹と薔薇」3話。あれよあれよと展開してます
『牡丹と薔薇』中島丈博/徳間文庫

昨日のサブタイトル「父は梨園の〜〜」を「離縁」と誤って書いてしまいましたが、言い得て妙といいますか、せっかく会いに行ったにもかかわらず、父・大物役者・長谷川梅鳳(本名はてらおかときおというがっかりするような平凡な名前←萌子談/佐藤仁哉)は娘・眞澄(美山加恋)にかなり冷たいのです。
離婚したわけではないですが、お母さん・萌子(山口いづみ)とは遊びだったみたいです。

楽屋は「神聖な場所」


「何しに来た」からはじまって、ふだんの口調も芝居がかってるお父さん、片膝立てて、大熱演。隈取りメイクで、舞台のワンシーンを見ているようでした。こわそうに見えるのも効果的ですが、悪役メイクではないはずなので(「暫」に近かった?)、お父さんの真意がわかりにくいのは、狙いでしょうか。
楽屋を「神聖な場所」とお父さんは言います。その楽屋は洋室の一角に畳を敷いて、そこでお支度するようになっていて、その座敷に眞澄がずけずけ上がり込むことで、不可侵な聖域に踏み込んでいることが強調される演出がさりげなくうまい。

舞台のワンシーンといえば、あっという間に12月になっていて、眞澄が大学の仲間たちとどこぞでクリスマス飲み会をやっているシーン。


下手(向かって左)にテーブル席、上手(右手)にハンガーなど、前方にカウンター席で、客が眞澄たちしかいない。こういう舞台装置あるある。そこで繰り広げられる、わかりやすい、軟派な男と眞澄のやりとり。こちらの舞台的表現は、ここでの人間関係の無為さをよく表しています。
眞澄は男の鼻に怪我をさせ(真っ赤なお鼻のトナカイさん)、家に戻っても大暴れ。
倒れたクリスマスツリー状のライトが照らす、小日向(岡田浩暉)の名刺。

眞澄は彼に会いに行きます。

冬のローズガーデンは寂しいからと案内されたのは温室。そこでは、新種の薔薇が研究開発されていました。
いきなり、薔薇の種をとってるところが出て来て、1、2話で描かれた出産シーンと繋がっていることを感じさせます。
咲き誇る薔薇の花たちが、画面を彩る装飾物ではなく、命の表れのようです。
それも、自然交配でなく意識的に交配された薔薇たちなので、人工授精で子供をつくっていく近未来世界のようにも見えてきます。

女優の名前をつけた薔薇がたくさんあるという台詞から、優秀な俳優の血を受け継いでいる眞澄も、この薔薇のような存在なのかもしれないと思わせて……。

朝ドラ対昼ドラ


1話で「牡丹」、2、3話で「薔薇」が登場して、あっという間にタイトルもクリアしました。しかも哲学的に。さすが、巨匠・中島丈博。
見立ての妙といえば、朝ドラ「あさが来た」もかなりのものなのですが、朝ドラ対昼ドラで見立ての妙対決を楽しめそうな至福なシーズンです。

……なあんて、悠長にして見ていると、後半、小日向と眞澄の恋が盛り上がり、早くも小日向家を訪問、そこで「ぼたん」という名の4歳児が登場! 誕生日まで一緒で、まさか、自分が生んだ子? と固まる眞澄の顔にカメラが徐々に寄って……、次回への引きのテクニックも心得たものです。
まだ3話だなんて思えません。
(木俣冬)