
58話はこんな話
あさ(波瑠)は、和歌山に発つ前、家を訪れたはつ(宮崎あおい/崎の大は立)に、新次郎(玉木宏)が三味線の師匠・美和(野々すみ花)のところに行ってしまったことを愚痴る。
ところが美和は、五代(ディーン・フジオカ)のところに出向き、私もファースト・ペンギンになりたいと申し出ていた。
新次郎はなぜあさのために奔走するのか
お家の仕事をせず、いつもフラフラ、芸事に興じている新次郎が、藍之助に「お父ちゃん」と呼んでほしいと頼む場面はどきり。
そんなに子供がほしいのか。確かに、結婚して10年、子供ができないのは寂しいかもしれない。でもあさには言わずにずっとひとりで我慢して、その本心を唯一、藍之助だけに見せるなんて可哀想で可哀想で・・・。
そして、惣兵衛に頼まれたはつのお琴探しに躍起になって、亀助(三宅弘城)を引き連れて大阪の町をひた走る。ふたりが走るシーンが58話のよいアクセントになっている。
そうとは知らないあさは、美和との仲を嫉妬。とはいえ、新次郎に後ろめたい行為がまったくないものだから、この嫉妬も微笑ましいばかり。
「あさが来た」はびっくり(ぽん)するほど清らかな世界なのだ。なにしろ、旦那さんへの悩みを吐露したあとの姉妹の話題は、父と弟の断髪のこと、みかんや大根のことなど、たわいないものばかり。これをわざわざ語りに言わせるかと苦笑しつつ、うめ(友近)が、これまでふたりがそれぞれ違う苦労を乗り越えてきたと解説することで、苦労したけど今はこうしてたわいないことをいつまでもしゃべっていられるほど落ち着いたんだとホッともなる。
でもさすがにこれだけでは足りない。ハイライトがちゃんとある。あさとはつが見つかったお琴で連弾するその音色に涙。
それを外で聞いているシャイな惣兵衛のカットが入るのもいい。
どこまで浄化させるのか、もうおみかんみたいにぴっかぴかやと思ったところで、はつが爆弾質問。
「なんで新次郎さまはあさを選びなさったのですか?」
この緩急が見事。
でも、きっとこの答えも美しいんだろうなあ。だって、あさが吹いているシャボン玉が透明で儚くて・・・。これを無下に割ってやるぜ、ぐへへとか、そういうのは絶対にない気がする。どこまで無垢な美しさを描くのか、「あさが来た」。
(木俣冬)
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