
77話はこんな話
大阪に帰る直前、大久保利通(柏原収史)が暗殺されたことを知ったあさ(波瑠)は、五代(ディーン・フジオカ)のことが心配になり、うめ(友近)を置いて、五代のもとへ駆けつける。
五代があさに!
冒頭、新次郎(玉木宏)の三味線の弦が切れる。
この不吉感は、大久保利通が暗殺されたことなのか、それとも、あさが五代の元に走ったことなのか。
生前、正吉(近藤正臣)が、三味線を聴きたがっていたと、よの(風吹ジュン)に言われて、三味線を弾きはじめる新次郎。
放送開始4分29秒あたりから曲がはじまり、よの、ふゆ(清原果耶)がうっとり聴き、その頃、東京ではあさが五代の元へ走り、五代の事務所についたのが6分10秒。ほぼ2分間の演奏が、様々な感情のうねりを大いに煽る。
五代は、無二の親友があまりにふいにこの世から消えてしまったことで、すっかり動揺し、飲んだくれて、思わずあさにすがりつく。
何がすごいって、通常、こういった場面には恋愛要素が不可欠なはずなのに、あさにはまったくそれがないことだ。
五代の心中を慮り、そのままにしておけず、帰省の予定をドタキャンして脱兎のごとく走るあさ。ふいに五代に抱きつかれ、一瞬、躊躇しながらも受け止める。普通なら、そこに若干のラブフレーバーがかかり、ふわっとしているものなのだが、あさの顔はきりっとしている。完全に恋愛感情抜き。どちらかといえば、友情だったり、子を守る母のようだったり。
朝ドラに不倫要素は、かつて「カーネーション」で物議をかもしたこともあって、自制しているのかもしれない。
その代わり、五代とあさのわかりにくい距離感を、亀助(三宅弘城)とふゆの関係性がフォロー。報われない思いに揺れながら、ピエロ的役割にならざるを得ない亀助(亀助がもっていた舌が出るからくり人形、かわいかった)が、五代の立場を代弁しているようだ。
今日の三味線の独特なねばり気のある音色も、登場人物の複雑な情感を盛り上げる、いい助けになっていた。
ところで、なんで、うめ(友近)は何がなんでも力づくで、あさが五代に会いに行くのを止めなかったのか。やっぱりうめも大久保利通に会っているので、動揺かつ五代を心配する気持ちが先に立ってしまったのか。
(木俣冬)
木俣冬の日刊「あさが来た」レビューまとめ読みはこちらから