今、再び人気を集めているプロレス。「プロレス女子急増!」なんてニュースがメディアを賑わすのも珍しいことではなくなって来た。


芸能界にも熱心なプロレスファンは多い。
芸人ではケンコバや有吉、博多大吉、ミュージシャンではファンキー加藤、SEKAI NO OWARIのDJ LOVE、俳優では古田新太や染谷将太、アイドルではAKB48の倉持明日香や元AKBの光宗薫などが有名だろうか?
プロレスファンである筆者的に、その筋金入り度で推したいのがタッキーこと滝沢秀明。
言わずと知れたジャニーズ事務所のトップアイドルだ。その超ディープなプロレスマニアぶりは、芸能界No,1かも知れない!?

タッキーの超絶プロレスマニアエピソード


タッキーは子供の頃、大仁田厚を中心に過激なパフォーマンスを売りにしていた団体FMWの追っかけをしていたほど。その愛情も知識も半端ないのだ。
2011年11月放送の『中居正広の怪しい噂の集まる図書館』では、「音を聞くだけで電流爆破デスマッチを当てる!」という超難問に挑戦。
爆破音を聞くのみでデスマッチ名を当てるどころか、対戦しているレスラー名や試合の年月日や会場まで的確に回答し、全問正解という偉業を成し遂げている。
そもそも一般人には試合形式からして意味不明。タッキーじゃなかったら、キモがられること必至である。

また、子供の頃の夢はプロレスラーであったタッキー。ラジオでは自身のプロレス団体を作りたいと熱い思いを語っている。
「僕のリングネームは『ハイキックソルジャー』なんですよ。僕は昔っから『ハイキックソルジャー』って名前でやってますから。
覆面レスラーに憧れていたんでマスクは被ります。悪役っぽい感じなんだけど、実はヒーローだった、みたいな。タイツも黒にシルバーのラインが入ったのを履きます」
妙に具体的なのことからもタッキーの本気度が伺える。昔っからハイキックソルジャーとさも当然に語る「中2テイスト」もたまらない。タッキーじゃなかったら、引かれること必至である。

そして、何より他のプロレス好き芸能人と一線を画すのは、日本プロレス界の象徴・アントニオ猪木と試合までしてしまっている点なのだ。

引退しても衰えぬカリスマ・アントニオ猪木に挑むタッキー


2000年3月11日、横浜アリーナで『第2回メモリアル力道山』というプロレスのビッグイベントが開催された。
日本プロレス界の創始者である力道山を偲ぶべく、当時の様々なプロレス団体が集結したイベントであったが、そこで突如実現したドリームマッチがアントニオ猪木vsタッキーなのだ。

猪木は1998年に現役を引退し、当時57歳。とは言えそのカリスマ性は健在。
引退試合も、総合格闘技の世界的な大会であるUFCのチャンピオンであったドン・フライに激勝しての幕引きであり、柔道王・小川直也をプロ格闘家に育て上げ、格闘技界にも強い影響力を持ち始めた時期である。久しぶりのリングで「何を魅せるか」に注目が集まっていた。

対するタッキーは当時17歳。
ジャニーズ事務所期待の新星としてドラマに多数出演。前年の99年にはTBS系『魔女の条件』で、松嶋菜々子演じる高校教師と恋に落ちる生徒役を好演。最高視聴率29.5%を記録するなど、トップアイドルの階段を猛スピードで駆け上がっていた時期だ。
エキシビションマッチとはいえ、試合が組まれたこと自体が奇跡の顔合わせなのだ。

スペシャル・エキシビションマッチ「アントニオ猪木vs滝沢秀明 3分1本勝負」


特別レフェリーを務めたのはバラエティ番組でもお馴染みの藤原組長。会場にタッキーファンの黄色い声援が飛び交う中、その組長がボディガード代わりに先導しつつ、まずはタッキーが入場。
続いて、プロレスファンの野太い猪木コールの中、アントニオ猪木が入場。

タッキーは上下ジャージ姿、猪木はTシャツにジャージ姿で、3分1本勝負のエキシビション。お祭りムードのまま、お茶を濁す程度の余興になるかと思いきや、そこは百戦錬磨の猪木。
試合前のレフェリーのチェック時に、いきなりタッキーに張り手を炸裂! ほとばしる殺気で観客の気持ちを掴んだ猪木は、スライディング式の「アリキック」2連発。さらに馬乗りになっての張り手に鉄拳制裁と畳み掛ける。
ドラマの主演作も控えている時期なのに、容赦なし! ジャニーズ事務所的には肝を冷やす展開に会場は大歓声だ。

タッキーはジャブ&Tシャツを破く荒技で反撃。
すると猪木は自らTシャツを引きちぎって裸になり、衰えぬ肉体美を披露し会場をさらに盛り上げる。
手四つの状態の力比べではタッキーに圧されて「魅せた」猪木は、そのままダブルリストアームソルトの大技でタッキーを後ろに大きく投げ飛ばし、喝采と悲鳴を集めるが、最終的にはタッキーのアリキック連打にテイクダウン(してあげる)。
すかさずタッキーのエルボードロップが決まってフォール! 藤原組長の高速カウントのアシストもあり、4分1秒体固めで見事猪木に勝利したのだった。

滝沢秀明「芸能界とプロレスって似てる」


イロモノ扱いされかねない異次元対決を成立させた猪木はさすがであり、熱狂的プロレスファンを敵に回しかねないこのオファーを受けたタッキーも見事であった。

2011年11月放送の『アナザースカイ』で、タッキーはこう語っている。
「芸能界とプロレスって似てると思うんですよね。表現者でもあり、勝負するっていう場面も同じだと思うんで。一人ひとりの色んなカラーもあって、芸能界ってリングの中で闘っていくみたいな」
芸能界にプロレスファンが多いのもうなずける名言である。

ちなみに、唐突にこの試合が組まれた背景は未だに謎であり、当時100円ショップのダイソーでこの試合が収録されたDVDが発売(もちろん100円)されていたのも謎……。
芸能界とプロレス界、謎が多いことも共通なのは間違いないようである。
(バーグマン田形)
編集部おすすめ