1月24日放送 第3回「策略」 演出:木村隆文

弟はつらいよ
18.3%と、1、2話よりも若干下がった第3回「策略」は、武田亡き後、ひとまず信州・真田の里に戻ってきた昌幸(草刈正雄)が、「のるかそるか」の作戦を発動し、それに翻弄される長男・信幸(大泉洋)と次男・信繁(堺雅人)の各々の悲哀が描かれた。
信繁をめぐる女性たちに、長澤まさみ、黒木華などのキレイどころがそろい、かつて織田信長を2回も演じたことのある藤岡弘、が本多平八郎忠勝役で、三谷幸喜ファミリーの重要人物のひとり西村雅彦が室賀正武(西村雅彦)で登場するなど、出演者の顔ぶれも豪華だ。
「真田丸」を見逃せなくする工夫のひとつ。
タイトルバックが長い(体感でしかないですが長いですよね)のを、名場面でフォローしているのか、名場面を入れたことで長くなっているのかは定かではない。
さて、恋する女子っぽさを溢れさせるきり役・長澤まさみにツッコミどころもいっぱい。それは後述するとして、まずは、次男の悲哀について完全理解しておくことが先決。
真田の里に戻ってきて、弟・信尹(栗原英雄)や叔父・矢沢頼綱(綾田俊樹)と軍議する昌幸。
「のるかそるかは 当家の家風である。」と頼綱は豪快に笑う。
その軍議に呼ばれないと外でしょげているのは信繁。どんなに役に立っても「次男坊とはそういうものだ」と達観している地味な主人公のもとへ、弟つながり・信尹が顔を出す。
「わしはあの人の手足となり、あの人の思いを叶えるだけじゃ」と言う信尹を、「叔父上はすばらしい」と褒める信繁。その心は「いっつも父上の影におられます」。
それを受けて、弟の先輩・信尹は、
「武田に仕えておきながら上杉にとりいれり、さらに北条と通じるなどわしにしかできぬ仕事だ。ここまであやつらの動きを抑えてきたのはこのわしだ。真田信尹を侮るな源次郎」とプライドをのぞかせる。
彼を「鏡とする御方」と尊敬心を見せる信繁の肩に触れる信尹。ああ、ここで、真田信繁は、弟人生のバトンを託されたのだ。重い・・・。
とはいえ、このへんは、2話で描かれたことをもう一度、念には念を入れて説明したという印象で、3話の中心になるのは、信繁の三角関係・・・もあるが、やっぱり、源“三”郎と名付けられた長男・信幸の悲哀だ。
兄もつらいよ
嫡男・信幸は、父の命を受けて、上杉に大事な文をもっていく仕事を任されるが、途中、昌幸に対抗心を燃やしている信濃国衆仲間の室賀正武(西村雅彦)と出浦昌相(寺島進)に追いかけられ、お供の佐助(藤井隆)が斬られた上に、文を奪われてしまう。
責任を感じる信幸だったが、実はこの文、昌幸の織田へのアピール作戦。「敵を欺く前にまず味方から」と信幸には本当のことが知らされていなかった。
「おまえは芝居ができんからなあ」と言われてしまう信幸。
ひとり、こぶしを握り・・・悔し泣きする場面では耳まで赤くし、昌幸の思いがけない言動を聞くたび、顔にショックと不信感のようなものを徐々に滲ませていく大泉洋に、芝居ができない役を当てるとは・・・皮肉である。
それはともかく、父上に好かれてないんじゃないかと落ち込む長男は、弟に話かけると「話を聞いてあげたいのですが・・・」とあしらわれてしまう。
その上、昌幸の作戦が功を奏し、信長に諏訪へ呼び出される際、お留守番を言い渡され、「なぜないがしろに!」と逆上する長男に、父は「おまえを残すのは何かあったときのため」はいたってクール。
嫁・こう(長野里美)は病気がちで、悩みが尽きない長男だが、その役割を全うすることだけが彼の誇りだ。
途中、父が碁を打つシーンがある。
こよりも碁石も、小県群の国衆にも五分の魂。みんなみんな生きているんだ。戦で、家の血筋を絶やさぬため、皆、それぞれ、与えられた役割をせいいっぱい果たすことに命と知恵を賭けるんだ。
きりは演技がうまそう
信繁のことが気になるきり(長澤まさみ)だが、信繁の気持ちは梅(黒木華)に向かっている。
信繁の付き添いのようにして、梅の家にやってきたきりは、一応、信繁と梅の世界をつくってあげようとちょっと外れ、しゃがんで薪を見ながら「薪を並べて乾かしているのねえ」と見事な説明台詞。ひとはやり場のなさを誤摩化すために、説明台詞を棒のように吐くしかないものなのだと、三谷幸喜に教えてもらった。
そのあとも、ぼそっと何か言っている感じもよかった。
もうひとつは、戦いのシーンで活躍した梅を見ながら、足をケガしたことを装い、まんまと信繁におんぶしてもらう。きりは、なかなかの演技派のようだ。
(木俣冬)