NHK 大河ドラマ「真田丸」(作:作三谷幸喜/毎週日曜 総合テレビ午後8時 BS プレミアム 午後6時)
2月14日放送 第6回「迷走」 演出:木村隆文
「真田丸」の視聴率が迷走している9つの理由

おかしい。快調に進行しているように見えた「真田丸」の視聴率が第5回の19.0%から16.9%となぜか下がって6回中最低視聴率になり、サブタイトル通り「迷走」状態に。

その要因を考えてみた。

要因その1:佐助が役に立たない


冒頭5分で、信繁(堺雅人)の姉・松(木村佳乃)が敵兵に追いつめられ、断崖絶壁から琵琶湖(?)に飛び込んで行方不明に。
颯爽と現れたわりに役に立たなかった佐助(藤井隆)。彼が、落ちた松を見てポッカーンと口を開けていたのがいけないのか。その後、「追って飛び込んだのですが」と台詞だけで済ませたのがいけないのか。

要因その2 信繁が暗い


落胆することこの上ない松の夫・茂誠(高木渉)に「生きていてこそ」と2回繰り返し励ます信繁だが、実はダメージは人一倍。
「ずっと兄より才があると思っていた」「役立たずの次男坊」「真田の家にいる意味など何もない」と己のうぬぼれを猛反省。


要因その3 信繁がきりに見透かされている


きり(長澤まさみ)はすごい。
信繁の意外な弱さを見抜き、「みんなに言ってほしいんでしょ あなたのせいじゃないって」とどS攻撃。
結果、また梅に株をとられることになるわけだが。

要因その4 梅(黒木華)と信繁の場面が良過ぎる


きりのおかげで、梅と信繁がいい感じに。
「何も言わなくていいから私の話を聞いていてくれ」と言った後、「あの 何か いっても構いませんよ」と催促する信繁が可愛らしいが、待てよ。この言ったことをすぐさま覆すのは父(草刈正雄)譲りではないか。
  
それはともかく、「ではひと言だけ」と口を開いたきりの言葉が素晴らし過ぎる。赤に色替えしたいくらいだ。


「もし真田の里に何かあった時は 必ず 私をお助け下さりませ」

あなたのせいではないと慰めるよりも、あなたの力を信じているという意味のことを言って、チャンスを与える。案の定、信繁はやる気になって笑顔。男のひと操縦法を梅に学びたい。

こんなにいい場面があったにもかかわらず、なぜ、視聴率に反映されないのか!
後で「薪はひとを三回あたためる」って話をフェイドアウト気味に語らせるから、混乱してしまうのではないか!

要因その5 兄・信幸の顔が伸びてばかり


「私の意見が取り上げられたことなど一度もありませぬ」
生き方や考え方は誰よりもまっすぐなのに、こんなふうに卑屈にならざるを得ないおにいちゃん信幸(大泉洋)は、お父さんの言動に毎度毎度、目と口をポカーンと開け続け、そもそも面長の顔が間延びしていくばかり。
声を張りまくる西村雅彦(室賀正武役)に「黙れ小童!」とこれまた毎度毎度喝破されるし、ほんと、かわいそう。
ちなみに、母・薫(高畑淳子)も面長の顔がポカーンでますます長くなる仲間だ。
世の中の長男と母は、彼らを見て、肩身が狭いのかもしれない。


要因その6 お父さんが決断しちゃった


のらりくらりが売りで、「朝令暮改」と言われる昌幸が、「わしが肩入れした者はことごとく運を逃す」
「わしは疫病神か」と息子・信繁同様、自信喪失。
がっかりさせないで〜と思っていたら、滝川にも北条にもつかないと強気に。
でも、そのパターン、第2話の、上杉か? 北条か? と悩んで、どっちにもつかない! 織田につく!って言いだした時を彷彿とさせる。
お父さん、いっつも「わしはどうしたらいい?」とひとに聞くわりに、ひとの言うこと全然聞かずに、独断するなあ。

要因その7 素っ破がかっこ良すぎた


いまいちいいとこなしの佐助に比べ、同じ忍びでも出浦(寺島進)はかっこいい。
森長可(谷田歩)を守って信濃を抜けようとしている途中、信繁に出会った出浦は、短期間に名言連発。
「主人を不意打ちで襲う人間に 与するものは少なかろう」
「素っ破(忍びの者)は目先の損得では動かぬ。
一度家臣と決めたからには 最後まで尽くすのが 我らの流儀」
「乱世なればこそ 我らの流儀に値打ちが出る」
「素っ破は戦では死なぬ」
「素っ破が死ぬ時は、信用を失った時」
 台詞を引き写せば引き写すほどしびれる。
これでのらくら真田家の生き方がすっかり霞んでしまったではないか。やっぱり出浦の生き方に共感するのが人情ってものだ。

要因その8 BS で見てる人が多い


どうやら、BSで早い時間に見ている人が多いようで、BS の視聴率は高いそうだ。
少しでも早く見たいという「あまちゃん」現象と似たことが起りはじめているということは、視聴率以外の価値観が高いという証拠。むしろ今後が楽しみになってくる状況だ。

要因その9 やっぱり5回の伊賀超えがふざけ過ぎた


前回の家康(内野聖陽)の伊賀超えがドタバタし過ぎて、高齢の方が面食らったのではないか。
面白いのにねえ。


思うに、ポカーンとした顔が出過ぎではないか。ポカーンと大河の相性が良くない気がする。
信繁がその分、思いきりキリっと口を結んでいるが、カバー仕切れていない。
北条氏政の高嶋政伸、羽柴秀吉の小日向文世・・・と曲者たちの面構えに期待したい。
余談ではあるが、織田の家臣・森長可役の谷田歩は、信長役の吉田鋼太郎の主宰する劇団AUNの劇団員。
シェイクスピア劇経験も豊富なので、吉田と並び、台詞の口跡がよかった。

そして、オフィス北野所属、北野武組の寺島進が義理に厚そうな男を演じるのも合っている感じがして、
キャスティングの妙を感じる。
(木俣冬)