最近、議員の不祥事が相次いでいるが、議員と近い立場にいる官僚にもかつて大スキャンダルが襲ったことがあった。
事件が起きたのは1998年、大蔵省(当時)が関わる汚職である。
この事件は汚職に関わった官僚が「ノーパンしゃぶしゃぶ」の店で接待を受けていたことでも大きな話題になった。この汚職事件の全容を振り返ってみよう。

大蔵省汚職事件の概要


すべての発端は、証券会社による総会屋の利益供与事件であった。総会屋の人物が証券会社の株を大量購入し、大株主の立場を利用して、不正取引を要求していた。東京地検の捜査の結果、逮捕された総会屋の株購入資金の出所が第一勧業銀行(当時。現みずほ銀行)であることが判明して大問題に。

第一勧業銀行への事情聴取により、「MOF(Ministry Of Finance)担」と呼ばれる銀行幹部社員の存在が明らかになった。
MOF担とは、大蔵官僚に対する接待を目的とした担当者であり、大蔵省に張り付いて彼らの動向を探るのが主な役割。大蔵官僚は接待の見返りとして、第一勧業銀行など大手銀行への検査に手心を加えていたのである。

これを受けて1998年1月26日、東京地検特捜部は大蔵省を家宅捜索した。ちなみに当時の東京地検特捜部トップは、現在プロ野球コミッショナーを務めている熊崎勝彦氏だ。
この結果、大蔵省の官僚ら合計7名が逮捕、起訴され、幹部に対しても停職・減給などの厳しい処分に。さらに、当時の大蔵大臣と日銀総裁が引責辞任する事態にも発展した。


国民があきれた「ノーパンしゃぶしゃぶ」接待


その後の調べで、大蔵官僚に対する過剰接待の全貌が明らかに。その中でも特に注目されたのが「ノーパンしゃぶしゃぶ」接待である。
この「ノーパンしゃぶしゃぶ」とは、ミニスカートにノーパン姿の女性店員が接客をするしゃぶしゃぶ料理店のこと。なぜそのような店を接待に選んだのかというと「通常の風俗店と違い、飲食費として領収書を落とせる」という理由であった。

この「ノーパンしゃぶしゃぶ」という刺激的なワードにマスコミはこぞって飛びついき、ワイドショーや週刊誌では連日この話題が取り上げらていた。

貧乏くじを引いてばかり?の武藤敏郎氏


汚職事件が発覚した当時、大蔵省官房長だったのが武藤敏郎氏。武藤氏自身は接待を受けた訳ではなかったが、部下が不祥事を起こしため、更迭処分に。
当時の報道では武藤氏の名前とともに、ノーパンしゃぶしゃぶ接待の件が取り上げられ、「武藤氏といえばノーパンしゃぶしゃぶ」という不名誉なイメージが定着してしまった。

武藤氏の不運はそれにとどまらない。汚職事件の後、武藤氏は2008年に次期総裁の最有力候補に踊り立つが、民主党の支持を得られず、対立候補の白川方明氏に総裁の座を奪われてしまう。
さらに最近も、東京オリンピックの事務総長に登用されたものの、エンブレム盗作疑惑などさまざまな問題の後処理に追われている。

貧乏くじを引き続ける武藤氏。ここまでくると少し気の毒にも思えてくる。

財務省の闇 ~最強官庁の「出世」「人事」「カネ」 (別冊宝島 Real)