
124話はこんな話
面会が解禁になったあさ(波瑠)の元へ、たくさんの見舞客が訪れ、その中に、はつ(宮崎あおい/崎の大は立)と惣兵衛(柄本佑)、藍之助(森下大地)親子もいた。
女の生きる道
良妻賢母になるための大事な話を、千代(小芝風花)が語る。
「男はんいうのは生まれつき、おなごにちょっと下でいてほしいと思う性分」で「頭のいいおなごを妻にする流行も上流階級にはあるのやけど、男よりでしゃばりやなんてことは決してあかん」のだそうだ。
そういう中で、新次郎(玉木宏)みたいな希有な旦那さんと出会ったあさは、幸せ者だ。
かつて、あさは、自分が恵まれていることを忘れてはいけないと、いろいろな人に言われてきた。だからからか、萬谷(ラサール石井)が捕まったことを聞いた時、彼を責めることなく、むしろかばう。
彼を追い込んだのは自分のせいだと言うあさ。炭坑の落盤事故のことを振り返る時も、サトシ(長塚圭史)の話を伏せて、自分の管理不足としていた。
もうちょっと親身になって萬谷の話を聞いてあげていたら・・・と後悔の念を口にする、できた人・あさに、朝ドラの限界を感じざるを得ない。
結局、無菌の善人にまとまってしまうんだよなあ。
そうしないと朝ドラとしては、多くの視聴者に支持されないことは「まれ」で実証済み。比べたらいけないと思いながら、「まれ」の主人公は、自分が好きなことばかりやって反省などほとんどせず、視聴者に批判されまくっていたが、それくらいの業の深さがある人物のほうが本当は面白い。
おそらく、モデルの広岡浅子は、あさほど自分を善人にしないで、どんなに人からそしられようと、ビジネスの道を邁進していただろうと想像する。
サトシのことが、萬谷に全く生かされてないんだから、そもそも、そんなに下々のことを気にかけてないはずなのだ、あさは。
にもかかわらず、善人話でまとめてしまうのが、朝ドラ。
そのへんに気づかれないように巧妙にいい話に見せることのできる天才・大森美香を今回、起用したことは、大成功だったと思う(褒めています)。
自分のことしか考えてない主人公の図太さを前面に出してしまった実験作「まれ」、気遣いしているふうに見せている「あさが来た」。東京制作、大阪制作、2作で、朝ドラは上手にバランスをとっているのだなあとしみじみ感じるが、どっちも、主人公は自分のことしか考えてない。
次作、東京制作「とと姉ちゃん」はどんな塩梅で、主人公を描くのだろうか。
(木俣冬)
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