
140話はこんな話
戦争も終わり、今こそ女子大学設立を! と成澤泉(瀬戸康史)は熱くなり、ついには創立委員を発足したが、応援する人もいれば反対する人もいて・・・。
クマとタコ
140回には、あさ絵ならぬ、風刺画がいっぱい出て来た。
風刺画とは、権力や強者をおもしろおかしく画にして皮肉ったもの。
成澤のところへ、溺れる烏みたいな絵が丸めて投げつけられてきたり、成澤のことを揶揄した絵(わかめの着物を着ていて名付け親の平十郎がそれを見ていることが笑える)が新聞に載ったり。こうして際立たせたかったのは、ただひとつ、大隈重信の妻・綾子(松坂慶子)の「以前、大隈が新聞にタコと相撲をとる風刺画を書かれて以来、相撲はあまり好みませんの」という台詞に相違ない。
139回の終わりで、綾子があさ(波瑠)に何かの勝負を挑み、あさが得意な相撲では? と思わせて、囲碁だったという引っかけを、大森美香は引っかけだけに終わらせず、役に立つ実際にあったエピソード紹介にする。
「大隈がタコと相撲をとる風刺画」と聞いて、なんかどっかでそんな絵を見たことある気がするとよくよく思い返してみたら、以前のレビューで参照した「商都大阪をつくった男五代友厚」(NHK出版)の中に、クマとタコが相撲をとっている絵が掲載されていて、その熊こそが大隈だった。
この絵が書かれたのは、五代が北海道開拓をはじめ、開拓使官有物の払い下げをしたことが、たくさんの人々の反感を買ってしまった頃(87話)。絵には、その時の開拓使長官・黒田清隆(蛸/クロタコ)の行動を、当時の大蔵卿・大隈(クマ)が阻止しようとしていた当時の状況が描かれていた。このふたりの対立の後、大隈は罷免されてしまう(明治14年の政変)。
ドラマで五代の人生が下り坂になりはじめたきっかけの出来事に、大隈が関与していたとは。そして今では、五代の代わりにあさを応援しているとは、なんという(宜ちゃんふうに)皮肉。
クマ対タコのほかに、大八車に乗ったタコを車夫になった五代が押している絵も残されている。
ペンギンがクマにバトンを渡している絵も風刺画家さんに描いてほしかった。
(木俣冬)
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