元ブラジル代表伝説の10番・ジーコ、日本が誇るキング・三浦知良、カーリーヘアーの司令塔・ラモス瑠偉、アジアの壁・柱谷哲二、クモ男・シジマール……。

戦術面、選手個々の能力、いずれもレベルで言えば今の方が圧倒的に上でしょう。
しかし、初期のJリーグには上記のような個性豊かなタレントが揃っており、華があったのは確かです。それは決して懐古主義ではなく、その後もブラジル代表で現役主将を務めていたドゥンガや、ユーゴスラビア代表の現役10番、ピクシーことストイコビッチなど、実績もスター性も兼ね備えた超一流プレイヤーがこぞって来日した事実からも明らか。現在では考えられないほど、Jリーグ熱は高まっていたのです。
その盛り上がりはCM業界にも波及。数々の名キャッチコピー、名シーンを生み出し、お茶の間の話題をさらいました。ここでは、そんなJリーグ初期を彩った懐かしのテレビコマーシャルを振り返っていきます。

ラモス瑠偉出演 まさおのJリーグカレー


「はい、まさお、Jリーグカレーよ」。「いっただきまーす」。お母さんから差し出されたカレーを食べるまさお少年。すると見る見るうちに、ベルディ川崎の背番号10、ラモス瑠偉に変身していく……そんな永谷園のCMです。当時では最先端のCG技術を使った内容だったため、放送当初から話題が沸騰。たちまちJリーグカレーは人気商品となりました。
ちなみに、同時期に永谷園で発売されていた「Jリーグふりかけ」にも、ラモスが出演。
幼稚園児くらいの子供たちが、この帰化外国人に促されるままにJリーグふりかけをかけたごはんを食べたら、ラモス風のルックスになるという、同様のパターンを展開します。
しかし予算が足りなかったのか、こちらは子供の顔そのままに、アフロとひげが突然生えるだけです。その風貌はさながらチビ佐藤かじろう、もしくはサイババ、あるいはミニサイズの元コロンビア代表MFカルロス・バルデラマといった趣でした。

「アルシンドにナッチャウヨ~」


アルシンドは、ブラジルのクラブチーム時代の同僚であるジーコの誘いによって、Jリーグ初年度に同じ鹿島アントラーズへ入団したストライカー。スピードに乗ったドリブルと抜群の得点力で、アントラーズの躍進を支えました。その活躍と共に、注目されたのは、彼の独特なルックス。頭の上部は短髪、えりあし長めなジャンボ尾崎風の髪型、通称「ジャンボカット」でありながら、後頭部は禿げ上がっているという、その身体的特徴も人気の要因となったのです。
そこに目をつけたのが、アートネイチャー。電車の中で頭髪がヤバめなサラリーマンを見つけて、「アルシンドにナッチャウヨ~!」と自虐的な注意勧告を促すブラジル人FWのその一言は、当時の流行語となりました。

「ヒデ、ラーメン食いたくね?」「行くか、ゾノ!」


ヒデとは、ご存知、日本サッカー界のレジェンド中田英寿。この至宝を差し置いて、CMにおける主役の座に就いていたのはゾノこと前園真聖です。今ではすっかり愛されキャラとなり、ワイドナショーなどのバラエティでイジられている彼ですが、この時は、彗星のごとく現れたクールなスタープレイヤー。中田はまだ無名の存在で、当時は“ゾノと一緒にCMに出ている人”程度にしか、世間一般で認知されていませんでした。

ちなみに前園は、「前園さんの言うとおり~♪」というヘアクリームのCMや、「イジメかっこ悪い。」というフレーズが話題となった公共広告機構のCMなど、後世にも残る名CMを引き寄せる得点感覚ならぬ、“CM感覚”がありました。しかし、もてはやされたことに浮かれ、稼いだ金で歓楽街に繰り出し「六本木のストライカー」となってしまい、選手としてのキャリアを満足なものにできなかったのは、残念の一言に尽きます。

このように、多彩な名選手が出演し、そのユニークな内容から話題となったJリーグ初期のCMたち。気になった方はぜひご覧になってみるといいでしょう。

(こじへい)
※イメージ画像はamazonより愛という名のもとに vol.3 (第7話~第9話) [レンタル落ち]
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