プロデューサーの横澤彪は小堺に「タモリさんにも言ったんだけど、毎日だからさ、仕事だと思うとキツいから、遊びに来るつもりでやってくださいね。それくらいでいいんですよ」と声をかけていた。その言葉を真に受けた小堺だったが……。
小堺 そうなんだ〜って遊びに来るつもりで行ったら、ふた月目くらいに(横澤さんから)「この番組いつから面白くなるんですか?」って。その時に、毛根が死んだ音がした。

1991年に始まった『ごきげんよう』が今週木曜日の3月31日で25年の歴史に幕を下ろす。その前番組『いただきます』が始まったのが1984年10月なので、小堺一機がこの枠でお昼の司会をしていた期間は実に31年半。『笑っていいとも』とちょうど同じ期間である。
終了間際ということで、ここ数日の『ごきげんよう』はゲストが「小堺さんの労をねぎらう」という展開が続いている。3月25日放送では後輩の浅井企画の芸人たち(キャイ〜ン、ずん、イワイガワ)が、3月29日放送ではめちゃイケメンバー14人がゲスト。サイコロの目には「ずっと聞いてみたかったこと」「立ち入った質問」などが並び、この機会に小堺さんに色々聞いてみよう! というモードに入っていた。
「築地」があるのに「冷めた料理」を出していた
小堺 だって、僕は欽ちゃんに「お前にはピンの仕事は来ない」って言われてたんだから。
3月25日放送の浅井企画芸人の回。
小堺 (萩本欽一に)「お前にピンの仕事来ない。お前ね、全部一人でしゃべっちゃうんだよな。なんとかでなんとかですよね!って。相手何もしゃべれない。ハイしか言えねぇだろ。お前んとこ、来ない」って言われたの。それで来たのが『いただきます』の仕事なんです。
『いただきます』は各界の「おばさん」たちをゲストに招き、悩み相談や本音トークを繰り広げるバラエティだった。しかし小堺一機は大将に言われた言葉をすっかり忘れ、前日に考えた話を一生懸命汗をかいてしゃべっていた。しばらくして、関根勤が大将と堺正章の言葉を持ってやってくる。
小堺 おばさんがあんなに面白いこと言ってるのに聞いてない、って言われたの。僕は120%やってるのがいいと思ってたの。だから、70%にしてみたの。すっごい面白いこと言ってたのおばさんたちが。僕は前の日に冷凍庫にいれた食材持ってきて一生懸命そこで配ってたの。ここに築地がいたのに。包丁だけ持ってくればよかったんだよ。
自分を抑えつつ、ゲストを活かすことで『いただきます』は人気が出るようになった。その姿勢は『ごきげんよう』のサイコロトークにも受け継がれた。小堺一機が大将の言葉から学んだことは、31年間生き続けていたのだ。
苦手なゲストが来た時はどうする?
日替わりでゲストとトークをするとなると、どうしても苦手なゲストが来ることがある。かつてタモリは『笑っていいとも』で「話題に困ったら食べ物の話をする」と言っていた。
しかし『ごきげんよう』のサイコロトークはゲストに話の主導権がある。自分の得意な話題に無理に引っ張ることもできない。そんな時はどうしたらいいのか。
矢部浩之 苦手なゲストもいるじゃないですか?そんな時って、収録時間早いんですか?(笑)
小堺 そうね
(一同笑い)
小堺 あとはやっぱり、こっち(トークの番のゲスト)でキツい時は、こっち(控えのゲスト)に振るね。「嫌いですか〜(振り返って)嫌い?」とか。で、こっちで膨らましてもらって、もう一回もらって投げるとか。
『ごきげんよう』の小堺一機は、一人で全部を仕切るというより、その場の全員を巻き込む戦術をとる。口の重いゲストが来た時は他のゲストと共になんとか話題をつないだり、逆に話が長いゲストが来た時はスタッフが「♪ごきげんよ〜う〜」のジングルを絶妙なタイミングで流して断ち切ったり、『ごきげんよう』は演者・スタッフ全員で場を成立させる空気を持っている。
『笑っていいとも!』は「森田一義アワー」だったが、『ごきげんよう』は小堺一機の冠がついていない。つまりこれは番組は小堺一機のものではなく全員のものであることを示し……と、口から出かかったが、そういえば『ごきげんよう』の冠は「ライオンの」だった。
関根さんの影
小堺さんの話をたっぷり聞ける回が続いたが、そんななか両日とも「関根さん」の名前が出てくるのがまた面白い。
天野ひろゆき もし芸人の中で相方を選ぶとしたら誰がいいですか?関根さん以外で。関根さんほぼ相方ですけど。
岡村隆史 小堺さんと関根さんっていつもなんであんなずっと吹き矢やりあってるんですか?
もはやコサキンとして切っては切れない2人。その関根勤は本日30日放送のゲストの1人になっている。他には毎年クリスマス時期に明石家サンタ&トナカイ一機のコンビが恒例になっている明石家さんまと、『いただきます』時代にABブラザーズとしてアシスタントを務めていた中山秀征。
この3人がゲストなんて、30分があっという間だろう。さらなる『ごきげんよう』秘話も期待できそうだ。
(井上マサキ)