ホントに醤油!? おしゃれすぎるパッケージ


今、私が自宅で使っている醤油は福岡県糸島市にあるミツル醤油醸造元の「生成り、」シリーズ。家に人が来たとき、テーブルに出すと、必ず「これ何?」と聞かれる。

31歳の若き職人が作る「ワインみたいな醤油」
「生成り、」シリーズ

パッケージには、どこにも醤油と書いていない。
下の方にさりげなく書かれた年号は、まるでワインのヴィンテージ(ブドウ収穫年)のよう。なんだか日本酒のようにも見える粋なデザインだ。

この醤油らしからぬパッケージに込められた思いとは? 商品をつくっているミツル醤油の城慶典さんに話を聞いた。

昔ながらの醤油づくりが夢だった


31歳の若き職人が作る「ワインみたいな醤油」
見れば見るほど、潔い

――醤油に見えない、シンプルでおしゃれなパッケージですよね?
「本当はこの醤油に関してPRしたいこと、パッケージに書きたいことはいっぱいあるんですが、書きすぎるとゴチャゴチャして逆にわからなくなってしまうかな、と思って」

城さんは、ミツル醤油の4代目。祖父の代までやっていた、手作りの麹で木桶に仕込む昔ながらの醤油づくりを、2010年に復活させたそう。

31歳の若き職人が作る「ワインみたいな醤油」
昔ながらの木桶仕込み

醤油づくりは学生時代から城さんの夢だったという。ただ、当初は醸造用の木桶や麹室の準備も必要だったため、まずは手軽にできる"つゆ"や"ぽんず"からスタート。そのとき、単なる無添加で自然な味わいというだけではなく、原料や土地への思いも感じてもらいたいと思い、「糸島テロワール」というコンセプトを打ち出した。テロワールはワイン用語で、"土地の気候風土"というような意味。ワインの場合はブドウが育った土地の特徴がブドウの味に直結する。

「醤油づくりでは、テロワールはワインのようにダイレクトに出るものではないです。ただ、せっかく地元にいい食材があるなら使いたいと思い、コンセプトに掲げました」
原料はできるだけ糸島や九州など地元の食材を使用するが、それに縛られすぎることはなく、あくまで品質重視。ときには糸島産以外にものを使うこともあるというが、ベースのコンセプトはそうだ。


――ヴィンテージのように年号を書いた理由は?
「年号は仕込み年度です。あえて2年熟成とか3年熟成とか書かなくても、そこから計算したらわかる。醤油ができるまでには時間がかかるということを、さりげなく伝えられたら、と思ったんです」

発酵食品である醤油は、できあがるまでに最低でも1年近くかかる。仕込み年による味の違いはそこまで大きなものではないというが、「毎年毎年ひとつの作品のように感じてもらえたら」とのこと。

―――「生成り、」のネーミングは?
「純粋さが端的にわかる言葉だと思って決めました。最後に読点を付けたのは、ここで終わりじゃなくて、まだまだ続いていく、というイメージです」

できたら上級者! 醤油の使い分けのコツ


31歳の若き職人が作る「ワインみたいな醤油」
左から濃口、うすくち、再仕込み

「生成り、」シリーズは、濃口・うすくち・再仕込みの3種類。濃口は非常にバランスのとれた味わい。うすくちはすっきりしていて香りも良く、個人的には一番好きな味。再仕込みはトロッとしていて味も濃厚だ。それぞれおすすめの使い方、使い分けのコツを教えてもらった。

・濃口……お刺身、かけ醤油など、万能に使えるベーシックな一本。
・うすくち……お吸い物や素材の色を活かした料理に。
白身魚や刺身とも好相性。
・再仕込み……濃口を数年後に再度仕込んだもの。肉料理や中華風の炒め物、味の濃い料理によく合う。

一番人気はつくっている本数が多い濃口だが、実は「うすくちが好き」という人が結構多いそう。また、通常であれば、濃口で味付けするものも、「ちょっと味を強めたいな」というときに、再仕込みをブレンドすると、味が強くなってうまみが増すそうだ。

31歳の若き醤油職人が思いを込めて作る醤油は、口コミで人気がじわじわ拡大中。商品はオンラインショップでも購入でき、取扱店も増えているそう。オシャレなパッケージもさることながら、一度使うとやみつきになるおいしさですよ!

(古屋江美子)
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