毎年、旬の芸能人がメイン・パーソナリティを務めているが、ダウンタウンがメイン・パーソナリティになると聞いたときは、耳を疑ったものだ。今と比べて、笑いに対してはるかにストイックで、何かと権威に噛み付いていたころ。チャリティとはもっとも縁遠い存在だったからである。
日頃の罪滅ぼしでパーソナリティに挑戦!?
ダウンタウンが起用されたのは92年夏、15代目のメイン・パーソナリティだった。
当初は目新しかった存在の『24時間テレビ』も回数を重ねる内に視聴率は低迷、前年の平均視聴率は6.6%と過去最低を記録していた。
そこで、マンネリからの脱却を目指し、思い切ったエンターテインメント路線に方針転換。白羽の矢が立ったのが、“若者のカリスマ”ダウンタウンだったのだ。
会見の席では「ウッチャンナンチャンの方が似合ってる」「日頃の罪滅ぼしになるかなぁ」「我々に任せといて番組を終わらせるイイきっかけを作ろうとしてるんじゃないですか?」などなど、毒を吐きまくる松本。
チャリティ色を強めてもダウンタウンらしくないし、かといって、いつもの毒のあるお笑いでは番組のテイストに似つかわしくない。
この難局にどう立ち向かうかが見どころだった。
番組ラストには浜田の目に涙が…
迎えた『24時間テレビ』では、応援に駆けつけたタレントをイジりまくり、「お涙頂戴」を売りにする企画でも、感動を押し売りすることはなし。いつものダウンタウンの姿にも見えたが、いつもよりは淡々と与えられた役回りをこなしていた印象だ。
もちろん、お笑いのコーナーでは本領を発揮。特に深夜の時間帯はチャリティの制約に左右されない純度100%のバラエティで大暴れしているが、これは今日まで続く『24時間テレビ』内深夜バラエティの先駆けとなっている。
番組のラストでは、浜田が涙ぐみ、松本が懸命にポーカーフェイスを気取って涙をこらえていたのだが、そのこと自体を翌日収録の『ガキの使い』で早速笑いのネタに。松本が涙ぐんだ浜田を散々茶化したのを始め、チャリティ番組に参加した自分たち自身を笑い飛ばしているから、さすがである。
名曲『サライ』登場はこの年に誕生
この年のメインテーマは「愛の歌声は地球を救う」。
全国アンケートで選ばれた楽曲を、武道館に来たゲストが歌う企画がメインだった。『24時間テレビ』のテーマソングとして有名な『サライ』はこの企画で生まれた曲だ。視聴者から寄せられた愛のメッセージを元に、谷村新司が代表して歌詞に仕上げ、加山雄三が曲を付けたのである。
名物「チャリティマラソン」もこの年から開始
名物企画の「チャリティマラソン」もこの年が最初だ。現在は100kmが基本だが、当初は倍の200kmという無茶苦茶な距離が設定されていた。しかも、出発地やルートを思いっきり紹介したために、各地に野次馬が殺到する事態に。初のランナーとなる間寛平は、そんな中でも必死に完走を目指したが、暑さによる体調不良とマナーの悪い野次馬たちが交通の妨げになることから、150km過ぎの地点で途中リタイヤとなっている。
平均視聴率17.2%は、この時点での最高記録。総募金額も歴代5位の好成績だ。
番組を壊すことなく、そして“いい人”になることもなく、自らのキャラクターイメージを守り通しながらも、さらっと大役をやってのけたダウンタウン。
(バーグマン田形)
※イメージ画像はamazonよりクイック・ジャパン 104