多くの人が不憫に思ったバーバラのラスト
同作における2つの世界は「上の世界=夢」、「下の世界=現実」となっており、主人公たちは主要キャラクターの一人バーバラと夢の世界で出会う。そこから主人公たちとともに冒険をすることになったわけだが、彼女はドラクエシリーズのなかでも随一の“悲劇のヒロイン”性の高い役どころとなっていた。
RPGにおいて記憶を失っているという設定はそれほど珍しいものではない、というよりよくある設定だったりするが、バーバラはそのほかにも他の仲間たちとは異なる点があった。彼女は、現実世界において大魔王に都市ごと滅ぼされてしまっており、心だけが上の世界に飛ばされてしまっていたのだ。実体をなくしてしまっていたがため、戦いを終えてそれぞれの帰路に立つ仲間たちをよそに、一人だけ現実世界から消えていく最後を迎えてしまう。
現実世界から一人主人公のもとを消えていくというバーバラの最後は、当時小学生だった筆者も幼心に「真実とはなんと残酷な…」と不憫に思ったものだった。唯一の救いは、一人夢の世界に戻りながらも未来に繋がる重要な役目を果たすところがエンディングで見れたことくらいだ。
バーバラに対するユーザーたちの考察がすごい
インターネットが普及して、個人が考えを発信するようになった昨今、ドラクエVIにおけるバーバラという存在に対する考察も多く目にすることができる。公式見解ではないものの、発信者たちの鋭い考察は「確かに」と思わせるものばかりだ。
たとえば同ソフトの箱には主人公とその仲間のハッサン、ミレーユがドラゴンに乗っているイラストだったが、このドラゴンはバーバラなのではないかという説があった。
あるユーザーは、「戦いの最中バーバラが一人残ると言い出したために船に残して戦いに行く場面がある。しかし、城に行く手段がなく、言い伝えに倣って土笛を吹くとどこからともなく金色のドラゴンがやってきた。このドラゴンこそバーバラだ」と考察していた。
実際、その考察から数年経ってからドラクエシリーズのシナリオライター堀井雄二が「バーバラは竜という設定は考えていた。
ドラゴンクエストは、シリーズごとの物語のつながりなど、緻密にストーリーが設定されている。しかしそれらの多くはプレイヤーに匂わせる程度でしかなく、はっきりとは語られないことも多い。バトルや攻略をメインにプレイするのも悪くはないが、もしかして…なんてストーリーの裏にまで思いを巡らせながらプレイすることで、クリア以降も長く楽しめるものだったりするのだ。
(空閑叉京/HEW)