『フレディVSジェイソン』 映画史に新たな流れを起こした悪夢の対決
画像出典:Amazon.co.jp「フレディvsジェイソン

ハロウィンシーズン到来。
街には、ホラーテイストのハロウィングッズや広告、パッケージ商品があふれ、便乗企画も星の数ほど。
国民的なお祭りイベントの勢いを感じずにはいられない。
そんな、「ホラー」で「お祭り」ムードを盛り上げるのに最適な映画がある。
2003年に公開された『フレディVSジェイソン』。
『13日の金曜日』と『エルム街の悪夢』、80年代ホラー映画の代表作が“悪”夢のクロスオーバーを果たした超エンタメ作品だ。


『フレディVSジェイソン』のあらすじ


夢に侵入する殺人鬼・フレディの惨劇から10年。フレディは人々の意識からすっかり忘れさられていた。フレディは現実世界の怪物・ジェイソンを操ることで、再びエルム街に悪夢をもたらし、自身のエネルギー源である「恐怖」を貯めて完全復活を目指すが、そのジェイソンが暴走! コントロールできないジェイソンにフレディが直接対決を挑むが……。



ホラー界のアイコン! ジェイソン&フレディとは?


ホッケーマスクにマッチョボディ、物言わぬ無骨なパワー系殺人鬼のジェイソン・ボーヒーズ。
殺人鬼の代名詞的存在であり、さまざまな漫画やゲームなどでモチーフにされてきた超メジャーなホラー・アイコンだ。
シリーズ1作目の殺人鬼はジェイソンではなく、またトレードマークのホッケーマスク姿になるのは3作目からというのは、ホラー映画好きには常識のトリビアだろう。

悪夢の支配者のフレディ・クルーガーもジェイソンに負けず劣らずの有名キャラ。
中折れハット、焼けただれた肌、鋭い鉤爪(かぎづめ)、赤と緑のボーダーニット。しかも、ブラックジョークが好きなお茶目(?)キャラ。
立ちまくりのキャラクターは、とんねるずやウッチャンナンチャン始め、パロディコントにされる率も高かった。
特にナンチャンは見た目がそっくりで、フレディ本人とコント共演したこともあったほどだ。
ホラー映画が苦手な方でも、両者の見た目や名前ぐらいはご存知に違いない。


シリーズ未見の方でも安心!?


冒頭、フレディ自らが『エルム街の悪夢』シリーズの概略や基本設定をわかりやすく独白してくれるので、ホラー映画初心者にはうれしい親切設計。
続いて、ジェイソンも『13日の金曜日』シリーズのお約束てんこ盛りで自己PRと、ファンサービスも満点だ。
「若い男女によるサービスショット」「そのサービス直後に一人を惨殺」「気配に気づいた相方を瞬殺」の流れは、もはや様式美である。
「口が悪い」「ドラッグ中毒」「セクシーな格好」「単独行動」。これらはすべて死亡フラグ。
「ゆっくりと歩いていても先回り」のお約束で、カメラが抜いたティーンエイジャーはもれなくあの世行きだ。
ともかく、両シリーズのイントロダクションを踏まえて、怒涛の本編へと流れ込むのである。

『13日の金曜日』も『エルム街の悪夢』も、アラフォー筆者的にはどちらも多感な時期にテレビ映画で“無理やり”入門させられた思い出が強い。特に、80年代から90年代中期にかけて『13日の金曜日』は土曜日夜9時からの『ゴールデン洋画劇場』でよく放送されていた。(テレビ映画の記事はこちら )
深夜放送の機会も多く、うっかり見入ってしまって眠れないなんてのも当時の「あるある」だろう。


ホラーというよりもアクション要素強めの娯楽作


両者に命を狙われる最高にツいてないヒロイン(ある意味贅沢かも?)が主人公であり、ストーリー上はフレディが諸悪の根源、ジェイソンがフレディ打倒のリーサル・ウェポン的な立ち位置だが、どちらも触るもの皆傷つけずにはいられない性格。
むしろ、ジェイソンの方が前のめりに殺(ヤ)りに行くアグレッシブさがあって、被害者数も圧倒的で質が悪い。

いずれにせよ、関わったものは皆巻き込まれてバッタバッタとなぎ倒されるわけだが、そのやりすぎなスプラッター要素はある意味コントと紙一重!?
後半に連れて加速する圧倒的なバイオレンスアクションは、恐怖以上に爽快感さえ覚えるほどである。

「不気味で残酷なホラーというよりも、むしろアクション要素が強い娯楽作として製作。ジェイソンの間が抜けた行動によるコミカルな味わいも増している」

CS放送「スターチャンネル」の番組情報が、的確にこの作品を評していると断言しておこう。


フレディとジェイソンがそれぞれのホームで大乱闘!


フレディのホームである「エルム街」では、夢の世界を舞台にジェイソンをいたぶりまくりの殺りたい放題!トラウマをチクチク突いてくる精神攻撃のいやらしさもおなじみである。
当然、フレディが断然優勢なのだが、ヒロインの機転によって現実世界に連れてこられるとパワー系のジェイソンの本領発揮。
ジェイソンのホームである「クリスタルレイク」での第2ラウンドでは、能力系のフレディも意外にもタフな一面を見せて一進一退の攻防に。
不死身の怪物同士ならではの、まさに死線を超えた肉弾戦は圧巻だ。


ちなみに、エルム街はオハイオ州、クリスタルレイクはニュージャージー州の設定。
グーグル検索で調べると、車で8時間以上かかるようだが、映画では意外とすぐ到着した感じ。
もっとも、こういった粗探しはキリがないので、テンポのよさとグルーヴ感を存分に楽しむのがオススメだ。


「vs映画」の先駆けとして映画史に残した確かな足跡


03年公開の『フレディVSジェイソン』は全米初登場&2週目と1位を獲得。全世界の興行収入は1億1,490万ドルと、まずまずな成績を収めている。
興収以上に注目すべきは、現在も人気の「vs映画」の先駆けとなった点だろう。
『エイリアンVS.プレデター』のクリーチャー対決や、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』のヒーロー対決は、この作品のヒットを受けクランクインが早まったといわれている。

また、ホラー界には続々とvsモノが誕生したが、B級作品が多いのはご愛嬌。なかには、『貞子vs伽椰子』のように、この作品を反面教師にむしろホラー色を強めるなど、バランスに苦心してヒットを飛ばした意欲作もある。
本作の果たした意義は実に大きいのである。


気になる勝者はどっちだ!?


本作の気になるラスト。
筆者的には、両者の格落ちがない、古き良き昭和プロレス的な決着として納得がいったが、皆さんはいかがだろうか。
ちなみに、シリーズ全般の興行収入では『エルム街の悪夢』の方が成功を収めているようだ。
09年には『13日の金曜日』が、翌10年には『エルム街の悪夢』が、原点回帰のリメイク版を公開。『エルム街の悪夢』は、全米公開の前夜祭で「ホラー映画史上最高の売り上げ」を記録するも、トータルの興行収入では『13日の金曜日』が勝利している。
両者のライバル関係はまだまだ続くといったところか……。
(バーグマン田形)