デビュー後しばらくは下積みが続いた常盤貴子
このように今や一流芸能人の常盤貴子にも当然、下積み期間があります。多くの女性タレントが「原宿でスカウトされて…」とか「オーディションで合格して…」とかいうカタチで、スターダムの切符を手に入れていくわけですが、彼女の場合は少し違います。
自分から芸能プロ・スターダストプロモーションの門を叩いて、売り込みをかけたのです。その心意気やよし。すぐに所属が決まり、かくして1991年の夏、女優としてデビューするに至りました。しかしもちろん、すぐに売れるわけはありません。最初の1年は、原宿の歩行者天国で路上ライブの司会やドラマの脇役などといった地味な仕事を、淡々とこなしていたといいます。
ドラマ『悪魔のKISS』、寺脇康文に胸を揉みしだかれる熱演を披露!
転機が訪れたのは、芸能界入りして2年目の1993年。フジテレビ系の連続ドラマ『悪魔のKISS』で主演クラスに抜擢された時です。出演8作品目にして訪れた最大のチャンス。
彼女が演じたのは、カード地獄に落ちた挙句、借金苦から風俗嬢に身を落とす女子大生の役。バイト先であるファッションヘルスに、寺脇康文が最初の客として現れた場面でのことでした。なんと常盤は上半身裸で登場。寺脇に露になった胸を揉みしだかれるという、衝撃的な演技をやってのけたのです。
後年、寺脇がトーク番組に出演した際「下着姿で来るとは聞いていたが、まさかノーブラだとは思わなかった」と述懐しています。どんな経緯で一糸纏わぬ姿となったのかは定かではありません。けれども、意欲満々な当時の常盤のこと。直前で自ら「やらせてください」と志願していたとしても、何ら不思議ではないでしょう。
所属事務所が版権を全て買い取ることに
この体当たりな演技によって、一躍注目の若手女優となった常盤貴子。『悪魔のKISS』が終わった次のクールからは、同局で放送された深夜バラエティ『殿様のフェロモン』のサブ司会者に抜擢されるなどしつつ、本業のドラマ女優としても主演クラスのオファーが次々と舞い込みました。
そうなると『悪魔のKISS』での例のワンシーンは、当然、ファン垂涎の「お宝映像」となるわけですが、事務所としては所属タレントのパブリックイメージを守らなければなりません。売れっ子となった常盤の胸を世に流出させまい……。そんな意図が働いたのでしょう。スターダストプロモーションはこのドラマの版権を全て買い取ってしまいます。結果、『悪魔のKISS』は再放送はおろか、ビデオ・DVD化もされない幻の作品となってしまったのです。
なんと不憫な『悪魔のKISS』。ストーリー内容は当時の社会情勢が分かる興味深いものですし、深津絵里、西島秀俊など、今でも一線級の俳優が若手として出演している記念碑的作品なのにも関わらず、二度と見れないのは惜しいにもほどがあります。常盤も今やアラサーで結婚もしていて、アイドル女優的な売り方をしているわけではないのだから、ぜひ事務所側には映像のアーカイブ化に対して、態度を軟化してもらいたいものです。
(こじへい)
※イメージ画像はamazonより映画パンフレット 「赤い月」監督 降旗康男 出演 常盤貴子/伊勢谷祐介/香川照之